「英雄のしつけかた」
第四章 カッシュ要塞

第82話 絶体絶命ってこんな感じ・・・・・・? 1

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 オルランドは息をのんだ。
 気配すらない。
 目を閉じれば、存在を認知できないほどだ。

 なのに、確かに男はそこにいた。
 両手に剣を携えている。
 傭兵の格好をしているが、東流派の使徒だ。
 それも尋常ではなく強い。

「いい動きだ、小僧。よくよけた」
 ひどく楽しげな口調だった。

 ニヤッと笑われて、オルランドは右手に剣をかまえた。
「間違いなく死神だな? こんなところに呼び出しやがって……俺はケルベロスのラクシ」
 ラクシは自然に立っているだけだったが、正攻法では敵わないとオルランドは直感する。
 フウッと息を吐いて、ニコッと笑った。

「ただのお試しにしては危なかったよ。お兄さん、どこから来たの? 剣豪とは別口?」
「俺か? わかっていて聞くな。小僧、それだけ言えれば大したもんだ」

 双剣を手にしたラクシはオルランドの様子を伺っているだけで、近寄ってこなかった。
 オルランドはゆっくりと立ち上がり、ラクシとの距離を測る。
 廊下の果てなのだから、かなり距離はある。
 それでも、奥義技の射程範囲だった。

 大きく動けば、確実に斬られる。
 剣を手に向かいあうと、相手のだいたいの力量を感じることができた。

 古い血だけ比べてみれば、オルランドの方が濃い気がするけれど。
 これじゃ動けないやと心の中で呟いて、オルランドは眉根を寄せた。
 正面から来ていた四人だけと思っていたのに、もう一人いるとは計算外だった。

 ケルベロスならば流派の要の一人である。
 ガラルドほどではないが、逸話も数多い。
 なにせ相手はケルベロスの名を持つほどの大人で、十三歳をやっと過ぎたオルランドとは比べ物にならない。
 流派の使徒として経験も技も豊富なので、簡単に出し抜けるわけがない。

 これはまずいぞと頭を悩まして、オルランドは外を指差した。
「いいの? 僕なんかに関わってないで、行かないと危ないよ? お姉さんの命に関わるのに」
 そう、ミレーヌは派手に悲鳴を上げていた。
 黙ってジッとしていれば魔鳥の興味も失せただろうに、あれだけ騒げば寄ってくる。
 魔鳥に囲まれて慌てたらしい。

 さっきから聞こえている声の様子からどうやら起きていただけでなく、魔鳥に囲まれるまでミレーヌはのんきに食事をしていたようだ。どんな状況でも自分らしく行動している。
 エイッと携帯食を投げればそちらに鳥は離れていったが、奪い合って争うのもほんの少しの間だけで、喰いつくすと次を求めて檻をグイグイと引っ張って揺らしている。
 聞こえてくる声や音で、そのぐらいのことは目に見えるように想像できた。

 三個しかないから、もう餌もないだろう。
 かわいそうだよ、なんて上目使いになった。
 もちろん、相手にされなかったが。

 ぶしつけなぐらいオルランドを観察しながらも、ラクシは非常に楽しそうだった。
「俺の役割は、この砦から誰も逃がさないことだ。ミレーヌ様は別係にお任せだよ」

 その言い方に、少し引っかかった。
 逃亡者を捕まえるのがラクシの仕事らしい。
 ならば魔物を退治する四人とは別に、もう一人いそうだった。



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NoTitle 

ぁぁぁああああ!! もうッッ!!
はらはらドキドキ♪

楽しいね♪ ねっ♪ 椿ちゃん♪

頼むからこのお話を1冊の本にして私にくれwwww

Re: NoTitle 

こんにちは(^o^)丿

楽しんでもらえてなによりです(*ノ▽ノ)♥
メッチャ女子力が低い展開になっていくけどねw
一般的から離れてる風変わりな話だけど、本にしたいぐらい気にいってもらえてうれしいな~♪
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