「英雄のしつけかた」
第四章 カッシュ要塞

第80話 双剣の盾 2

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 もっとも。
 英雄戯曲と現実には、天と地よりも大きな隔たりがある。
 これを作った奴はアホか、とガラルド本人があきれるほどの差だ。

 辺境へと一人出向いたのも、騎士や将軍のように作戦だの名誉だのにこだわる、面倒な者と動きたくないだけだった。
 戴冠を済ませたばかりのジャスティ王は友人だったが、何千もの警備兵が囲んでいるのだからほっとけばいいと簡単に判断した。

 それに。
 単身なら単純明快。

 目の前にいるのは全て敵なので、せん滅するのに考えずにすむ。
 味方が混じっていては、ガラルドの持つ力は破壊力が大きすぎるのだ。
 気をつけなくては味方まで壊滅してしまう。
 混戦した中でチマチマと単騎づつ倒すような手加減をするのは面倒くさい。

 まぁ、王がいなくなって滅びるような国は大した国家ではないし、街や営みを作るのは暮らしている人なのだ。
 人さえいれば、王や国など必要ない。

 当たり前にそんなことをガラルドは公言している。
 だから、頼むから他の場所では口を開くなと周りの者たちがとりなしている。
 双剣の盾や東の剣豪の名は、ひとり歩きしていても形のある希望と等しいのだ。
 それが、英雄としての役割でもある。
 一般人の夢や羨望を崩してはいけない。

 不承不承ながらも納得しているからこそ、ガラルドの英雄伝は成り立っていた。

 世間一般の人は、戯曲のガラルドの姿がそのままの彼だと信じていた。
 異国に暮らす者ならなおさらである。
 オルランドも憧れていて、例外ではなかった。

 それに、戦うガラルドは英雄らしいのだ。
 直接、触れた刃だけではない。
 大半の魔物に、ガラルドの剣そのものは触れてもいない。
 低く構えた位置から跳ね上がった剣筋が、疾風のように空を行く魔鳥まで切り刻んでいる。

 目に見えない疾風の刃。

 アレが奥義技だとオルランドは目を輝かせた。
 やっと見ることができた。
 厳しい決まりがあるので、道場に入門するか師範につかないと奥義は見せてもらえない。
 だから、本格的なやり方を間近で見るのは初めてだった。

 切り裂く風を巻き起こし、気合だけで魔物の攻撃を撥ね返し、武将神が降臨したようだ。
 実は、腹いせで暴れているのだが、オルランドには思いつかなかった。
 なんと、俺たちの作戦に従えないなら来るなと隊員からボコボコにされたあげく、全て片付くまでは砦への出入り禁止を言い渡されていた。
 異流派も巻き込んで討伐隊を結成するぞと本気の威嚇に、現在のガラルドは立腹中である。
 かといって、逆らったら本気でサラディン国の妖怪婆(国主)まで呼び出しそうな勢いだったので、不承不承に言いつけに従うしかなかった。



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