「英雄のしつけかた」
第四章 カッシュ要塞

第79話 双剣の盾 1

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 青白い闘気をまとう姿は、東の剣豪や英雄とよばれるにふさわしいものだった。
 張り詰めた空気が、一回り以上その身体を大きく見せている。
 向かってくる大量の魔物の群れに剣をふる。
 軽い調子だったのに、それだけで何十体もの魔物の身が砕けて霧散した。

 すごい、とオルランドは純粋に感動していた。
 遠目に見るガラルドは、英雄の呼び名に相応しいから当然である。

 砦の前に立ちふさがっている姿に、双剣の盾と呼ばれるようになった逸話も思い出した。
 生きた英雄伝は、人の記憶にも鮮やかである。

 確か、ガラルドは十五歳だったはずだ。
 仮成人前の若造なので、まだ駆け出しだった。
 それでも突出した能力から、次期奥義継承者だと指名を受けたばかりの頃。
 カナルディア国に攻め入るヴィゼラル軍を、辺境の町の手前でうち払った事がある。

 王都カナルに全ての護りを集める動きがあり、東流派にも王都民の暮らしを守ってほしいと協力要請があった。
 その時、国王に協力を承諾しながらも、王都ばかりが人の暮らす場所ではないと答えている。

 本来ならば退魔の技であるがと前置きして、東流派の次の長として言い放った。
「国や王を護るのは騎士の役目。我は人を護る。この命が続く限り、双剣の盾となろう」

 そして、単身。
 辺境へと馳せ参じたのだ。

 一国を攻めようとする巨大な軍を前にしても、双剣を手に不遜に笑っただけだという。
 結果は言うまでもない。

 一騎当千。

 本当に小さな町だったが、商家や下街の者まですべてを無傷で護りきった。

 ただ。
 敗走するヴィゼラル軍の追討要請が来たときには、涼しい顔で断っている。

「俺は盾だ。去る者は追わん」

 国王を相手に短く告げると、仮成人前の若造がといきりたつ貴族もいた。
 だが、ガラルドと眼差しを合わせただけで、王制を営む貴族は口をつぐむ。
 それだけの威厳が備わっていた。

 賢王と名高いジャスティは、ただ笑ったという。
「ならば、貴公こそ英雄に相応しい。双剣の盾は世界の至宝となろう」
 その時から英雄として讃えられ、双剣の盾と呼ばれるようになった。

 東の剣豪とは、戦った異国の兵士たちがささやき広めた名前である。
 神獣や神々の名を模すのではない。
 剣豪、そのままの強さだったと。

 この逸話は戯曲や芝居にもなっているので、そのくだりは実に有名だった。
 年齢や性別に関係なく、英雄戯曲の中にいるガラルドには憧れを抱いて当然だった。

 もちろん、オルランドもその一人だった。
 その力や姿を近くで見たいからこそ、こんな手の込んだ誘拐を企てたのだ。
 剣豪の技を近くで見たいけれど、捕まるのはごめんだったから、あれこれと知恵を巡らせた。
 そのかいがあるぐらい、ガラルドの戦う姿は勇猛だった。



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