「英雄のしつけかた」
第四章 カッシュ要塞

第78話 嵐の前ってこんな感じ 3

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 ふと、切り立った崖の方角から来る魔鳥の群れに気付いた。
 う~んと悩んで、ミレーヌのいる檻を見た。
 夜明けになったら消える類だが、少し数が多い気がする。

 静かにしていれば大丈夫だが、集中して魔鳥が檻を囲んだら、ほとんど餌状態である。
 そもそも、静かにできない性格だろう。
 さすがにそれはあんまりな気もするので、剣豪たちが早く来ないかなと思った。
 まだここに目をつけてないとか、朝を待とうと、警備団か騎士団みたいなぼんくらと同じ感覚でいたらどうしよう?

 少し不安になった。
 檻ごと下に落とされたら、中にいる者も助からないだろう。
 それは困ると頭を悩ませた。

 だけど、すぐに顔をしかめた。
 なんであんな口数の多くて奇妙な女のことを気にしているのだろう?

 意外な心の動きにギョッとした。
 ダメダメ、考えないようにしなくては。
 食べられちゃっても僕のせいじゃなくて、見つけられなかった剣豪がトロイだけだし。

 でも心配だなぁ。

 フラフラと風に軽く揺れている檻を、しばらくのあいだ落ち着かない気持ちで見ていた。

 フッと渓谷の先を見た。
 魔物の動きが乱れていた。

 よかったと安心した。

 双剣を手にした男が四人見えた。
 魔物たちの間を風のように駆け抜けて、まっすぐにこの要塞に向かってくる。
 行く手を塞いでいるモノは切り捨てているが、他には目もくれずすり抜けて走っていた。
 恐ろしい程に速い。

「へぇここで迎え撃つ気だ」
 思わず感嘆の声をもらした。
 途中で魔物を討伐するような、時間をとられるような行動はとっていない。
 疾風の速度で抜けるので、魔物たちが気付いた時にはとっくにその姿はすぎ去っていた。

 オルランドは観察するために、見晴らしはよくても自分の姿が目立たない位置へ移動する。
 隠れていても見つかってしまうと、剣豪たちは見逃してはくれないだろう。

 それにしても速いなぁと、オルランドはうっとりと見つめてしまった。
 これほど速い者たちを見たことはない。

 あっという間に双剣持ちは吊り橋までたどり着き、三人が要塞の中に走り込んだ。
 それぞれが別の方向に散っていく。
 合図もなにもなかったのに、申し合わせていたような動きだった。

 要塞の内部に入り込んだ魔物を風そのままの速度で、ためらいもなく狩り始めた。
 ご丁寧に襲われていた野盗を保護して、符で結界を作った中に集めている。
 殺傷許可の出ている連中でも生かす気なんだと、オルランドにもわかった。

 なんだか意外な気がした。
 手にかけてくびり殺すと犯罪者だが、魔物に襲われた者をほったらかしても罪にはならない。
 殺していい者まで保護する理由がわからない。
 それが流派の道だとか言いそうだなぁと、人ごとのように観察していた。

 ただ。
 魔物を狩る手際も、パニックに陥っている野盗たちを昏倒させ保護する手際も、見惚れるほど鮮やかだった。
 たった三人しかいないのに、一騎当千と評されるのも偽りではなかった。

 そして。
 要塞の中に入らなかった男を、オルランドは興味深く見つめた。

 しんがりを務めていたひときわ大柄な男が、吊り橋の前で仁王立ちになっていた。
 青白い闘気がその身を包んでいた。

 一目でわかった。
 それが、英雄と呼ばれる男の姿だと。



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~ Comment ~

NoTitle 

しかしまぁ・・
呆れるほど私を魅了してく作品だわよ。(笑)
どんどんおもしろくなってくもの♪

熊出没注意 

>魔物たちの間を風のように駆け抜けて、まっすぐにこの要塞に向かってくる。行く手を塞いでいるモノは切り捨てているが、他には目もくれずすり抜けて走っていた。

ここの情景が頭に浮かんできます。
めっちゃカッコイイですね。立ち止まらずに戦う、こういう勢いのある場面ってドキドキします。
そして、ガラルド偉い。要塞を我一番に破壊するかと思っていたのに(笑)
あ、破壊したらミレーヌが巻き込まれちゃうかw
まさに威嚇する熊の如し、堂々とした仁王立ち。
英雄の行動が楽しみです。

オルランドは将来素敵なツンデレになるでしょう(笑)

Re: NoTitle 

akoさんこんばんは

そう言ってもらえるとうれしいです(*^_^*)♥
かなり癖が強いけど、楽しいがいっぱいで、元気な気持ちになってもらえればいいな~♪

Re: 熊出没注意 

デジャブさん、こんばんは!

情景が浮かぶと言ってもらえてうれしい(>▽<)ノシ
ただ、ガラルドさんを目立たせるために、一緒に同行した三人の名前が出せなかったんだよね(ショボ~ン)

ラルゴと砂岩が魔物を切り捨てる役で、デュランが野盗保護にいそしんでいます。
そうです、やっぱり器用に何でもこなす人なので、戦闘ではなく呪府などで人命保護にいそしむデュランなのです。
「みんないいよな~気持ちよく剣をふるえて!」
なんて、心の中で思っているはずw

ガラルドさん、やっと活躍できます!
黙っていたら世界一カッコよく見える男なのですw
中身は残念だけど;;
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