「英雄のしつけかた」
第四章 カッシュ要塞

第72話 そういえば人質でした 1

 ←気持ちチョコ →第73話 そういえば人質でした 2
 オルランドはロープをしっかりと台所の鴨居に縛り付けその強度を確かめると、気を失っている男たちの手にロープの先を巻きつけた。
 息の根を止めてしまわないように、慎重に作業をすすめた。
 生かしておけば、頼まなくても噂をばらまいてくれる。
 ようは半殺しがちょうどいいのだ。

 端にある釣り針型の金具を軽く手に握らせ、よいせっと一人づつ窓から放り投げる。
 金具が体重で深く刺さり手を裂いてギャーッと身も世もない悲鳴が次々に上がった。
 ちょっと窓から覗いて、ブラブラと男たちが風に揺れている様子を見て、クスクス笑った。

 うん。この元気の良さなら、絶対に朝まで生きてるよね。

 振り向きたくてうずうずしていたミレーヌに、もういいよとオルランドは言った。
「偉いね。お姉さん、少しは人質らしいところがあってよかったよ」
「あら、わたくし、ずっと人質ですわよ?」
 言葉にとげがあると思いながら、ミレーヌは振り向いた。

 オルランドはフゥンとだけ生返事をしながら、パンパンと手のひらの埃を叩いている。
 叫び声が聞こえるのに他に誰もいない。
 どこにいったのかしら?
 ミレーヌが謎に思って首を傾げていたら、鴨居のロープを指差されて理解した。

「まぁ! あんな断崖絶壁に吊るされたりしたら、死にそうな悲鳴を上げるはずだわ」
 そんなふうに幸せな誤解をした。

 ただ、あんまり悲痛な叫び声なので少し気の毒になった。
 痛いとか死ぬとか悲痛な声だ。
 さっき襲われたことを思えば助けてもいいことがないし、窓を覗く気にもならなかった。
 自業自得、絶対にそうですわ。
 反省してくださいねと、心の中で合掌した。

「行くよ」
 さっさと外に出ようとするオルランドを、待って下さいなと呼びとめた。
 携帯食を包んだ六個の包みを棚から出す。
「本当にお姉さんは三個づつ作ったんだ」
 オルランドは初めて自然に笑った。
「まぁ! 作れと言ったくせにひどい」
 正直な気持ちで文句をのべると、素直な人質だねとオルランドはやけにおかしそうだった。

 腰のカバンから皮のポーチを取り出して携帯食を三個入れると、ミレーヌに渡して腰につけるよう指示した。
 ミレーヌが初めて見る旅用のポーチに、これは何かしら? と四苦八苦してしまう。
 不器用だねぇとあきれたように手を貸して、オルランドはさっさと奪うと腰につけてやる。
 残りの三個は自分の腰のカバンに当たり前に入れて、行こうとうながした。

「どこに行きますの?」
 ミレーヌはその後ろを歩きながら、おずおずと問いかけてみる。
 振りかえったのは爽やかな笑顔だったけれど、妙な返事が返ってきた。

「ん? とても目立つうえに、安全にも危険にもなるところ」
「危ないんですの?」
 さすがに不安な口調になった。

「人質はちゃんといい子にしておきなよ」
 オルランドは軽く外を見た。
 まだ静かだが、もうすぐ騒ぎが起きる。
 時間があるようであまりないかもなと、考えながらスタスタと足早に歩いた。



にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ

関連記事
スポンサーサイト
総もくじ 3kaku_s_L.png 交換詩・贈答物語 七色の海
総もくじ 3kaku_s_L.png 英雄のしつけかた
総もくじ 3kaku_s_L.png 短編集 ちょっぴり異世界
総もくじ 3kaku_s_L.png ミルキィ☆ロール
総もくじ 3kaku_s_L.png 喫茶ペロリストシリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png 短編集 恋の卵
もくじ  3kaku_s_L.png Making Twilight
もくじ  3kaku_s_L.png 詩集 kurayami
総もくじ  3kaku_s_L.png 交換詩・贈答物語 七色の海
もくじ  3kaku_s_L.png 潮騒の詩
総もくじ  3kaku_s_L.png 英雄のしつけかた
総もくじ  3kaku_s_L.png 短編集 ちょっぴり異世界
総もくじ  3kaku_s_L.png ミルキィ☆ロール
総もくじ  3kaku_s_L.png 喫茶ペロリストシリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【気持ちチョコ】へ
  • 【第73話 そういえば人質でした 2】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【気持ちチョコ】へ
  • 【第73話 そういえば人質でした 2】へ