短編集 恋の卵

ピンキーリング (テーマ:贈り物 あるいは プロポーズ)

 ←第40話 不滅の丘 1 →第41話 不滅の丘 2
 クリスマスのプレゼント。
 ない知恵を絞るのに、僕はいつも間違えてるようだ。
 彼女は、なぜか喜ばない。

 話題の映画のチケットを手に入れても。
 ブレイク中のミュージシャンのチケットを手に入れても。
 流行りのレストランに予約を入れても。
 抱えきれない程の大きさの薔薇の花束を渡しても。

「ありがと」

 つまらなそうに、そう言って終わる。

「これ、嫌いだった?」
「そんなことないわ。多分、好き」

 多分?
 僕は彼女の言うことが、よくわからない。
 僕は何を間違えてるのか、ちっともわからない。

 それでも、僕は彼女が好きなんだ。
 違和感を感じるのは、僕が贈り物をした時だけ。
 寄り添って公園を歩いたり。
 カフェで会話をしたり。
 普段は微笑みを絶やさない、穏やかな彼女。
 特別なことは何もないけど、自然な空気が愛しいと思う。

 ちゃんと笑ってほしいな。

 そんなふうに願っているのに。
 僕が贈り物をした時だけは、ハッキリとわかるつまらない顔になるんだ。

 今日もまた、間違えたらしい。
 赤い宝石のついたピンキーリング。
 店員が今年の売れ筋で宝石の嫌いな女の子はいない、なんて言うから奮発したのに。

 馴染みのカフェでコーヒーを飲みながら渡すと、彼女は少し眼差しをかげらせた。

「ピンキー?」

 うん、とうなずくと、彼女は肩をすくめる。
「ねぇ、どうして小指な訳?」
 まるで、不本意だわ、なんて言いたげな眼差しに、僕はまたわからなくなった。
 彼女は、どうして喜ばないんだろう?
「ダメだった?」
 うん、とあっさり彼女はうなずいた。

「指輪、嫌い?」
「好きでも嫌いでもないけど、ピンキーは嫌」
 ゴメン、と僕が謝ると彼女は眼差しをとがらせた。
「どうして謝るの?」

 どうしてと問われても。
 君が怒っているから、なんて言いにくい。

「ねぇ、どうして小指にしたの?」
 ふてくされたような彼女の問いに、今年のお勧めだって、と小さな声で応える。
 彼女は、やっぱり、と小さく呟いた。

 しばらく黙っていたけれど、フウッとため息をついた。
「この前、そろそろ先のことも考えようって、あなたが言ったのよ?」
 うん、まぁ、そろそろ結婚したいよなぁなんて話したけど。
 空気みたいに馴染んでいるから、自然にそう思っただけで。
 それが今、怒られている理由だろうか?

「なのに、ピンキー? 普通、薬指じゃないの?」
 ああ、なるほど。
 そこまで言われて、ようやく僕は気がついた。
「そっか、普通は薬指なんだ」
 もう! と彼女は肩をすくめた。

「ゴメン、気がつかなかった」
「知ってるわ、そういう人だって」
「ごめん、でもほら、赤い糸みたいでいいだろ?」
 苦し紛れで、僕は適当なことを言う。

 運命の恋人どうしみたいに、小指で繋がると思えばいい。

 彼女は少しだけ絶句した。
「なに、それ!」

 うわ、やっぱり御不満?

 続く文句を覚悟したけど、彼女ははじけるように笑いだした。
「なに、それ」
 優しくてやわらかな口調で、何度か「なにそれ」を繰り返す。
 それでも鮮やかに笑っていた。

 彼女が左手を僕に差し出した。
 思わせぶりな眼差しに、お気に召してくれたみたいだとホッとする。
 彼女の小指にピンキーリングをはめた。
 赤い石が、キラリと光った。

「仕方ないか、赤い糸なら小指でも」

 贈りものをしたことでは、初めてかもしれない。
 僕に向けられたのは、彼女の本物の微笑みだった。

「ありがと。これからもよろしくね」


にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ



別サイトに友人とのクリスマス企画で掲載した作品です♪
ただいま別サイトと作品の統合中w
関連記事
スポンサーサイト
もくじ  3kaku_s_L.png 短編集 恋の卵
もくじ  3kaku_s_L.png Making Twilight
もくじ  3kaku_s_L.png 詩集 kurayami
総もくじ  3kaku_s_L.png 交換詩・贈答物語 七色の海
もくじ  3kaku_s_L.png 潮騒の詩
総もくじ  3kaku_s_L.png 英雄のしつけかた
総もくじ  3kaku_s_L.png 短編集 ちょっぴり異世界
総もくじ  3kaku_s_L.png ミルキィ☆ロール
総もくじ  3kaku_s_L.png 喫茶ペロリストシリーズ
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  • 【第40話 不滅の丘 1】へ
  • 【第41話 不滅の丘 2】へ

~ Comment ~

承認待ちコメント 

このコメントは管理者の承認待ちです
管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【第40話 不滅の丘 1】へ
  • 【第41話 不滅の丘 2】へ