「英雄のしつけかた」
第三章 死神と呼ばれる少年

第67話 嫌な話 3

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 もう嫌だ、と五人そろってぼやいた。
「街道の騎士団と辺境警備団への知らせだってあるのに、なんで国王に話をつけに行くんだ? 本気で要塞を壊す気だぞ、あのバカ」
「正面突破と完全破壊しか知らん」
「熊だとわかっても、どうしてこう頭を使わないのかね? 悪くないはずなんだが」
「インテリだぞ? 兵法も古代文明も神聖語も完ぺきで、そりゃたいそうな英才教育を受けてるんだが。熊だからまったく使わないがな」

 とりあえず、夜明け前にガラルドと自分たちの総勢六人で要塞に行くかと、ボソボソと話す。
 騎士団のように退魔の技をほとんど知らない人間が多いとかえって邪魔になる。
 事態終結後に片付けに来てもらえれば充分だ。

「持ってくか? アレを」
 ミレーヌ様が要塞にいるならガラルド退治の武器が必要だと、ぼやき交じりにこぼした。
「アレってなんだ?」
 ガラルドを止められる武器がこの世界に一つでもあるなら見てみたかった。
 そろってすがる目に、デュランが大真面目に答えた。

「フライパン」

 確かに、と思わず遠い目になる。
 一度倒されてから、ミレーヌのフライパンには苦手意識があるようだった。
 さっきも、オムレツ停止には反応していた。
 フライパンをかまえて、二度とオムレツは作りませんとでも直接本人に宣言してもらえば、ガラルドも少しは考えを改めるに違いない。

 悲しい事に、暴走するガラルドを止められるのは、今のところミレーヌしかいない。
 彼女にムリなら、他の誰が何をしてもガラルドに対してはすべて無駄である。

「フライパンかぁ」
 要塞とオムレツを同じ秤にかけるなど普通ならありえないが、何せガラルドである。

「なら、俺の役目か? 斥候だし……」
 キサルがものすごく哀しい顔をした。
 ミレーヌを見つけてフライパンを渡すのが、斥候の最重要課題になるとは思わなかった。
 いなかったら、ただひたすら邪魔な荷物だ。

「気持ちはわかるが、文化財を保護できるかどうかの瀬戸際だぞ?」
「小さいのでもいいか?」
「でかいのじゃないと目立たないだろ?」

 あたりまえに返されて、やっぱりなぁとキサルは大きなため息をついた。
 そんなものを携えて要塞に出向く姿は、誰にも見られたくなかった。
 厳重に梱包して、フライパンとわからない形で携帯しようと、ブツブツとぼやく。

「なんであんな面倒な熊が長様なのかね?」
 それでも、他の人間を長にする気は全くないのだが。

 困った面はガラルド個人の素顔を見せる時だけに限定されている。
 まぁ日常があれだけ困った奴を中心にしたからこそ、会ったばかりの個性的なこの五人が急速に協調して馴染んだのかもしれない。

 やりますかと、無傷で要塞を陥落するために五人は動き出した。


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~ Comment ~

NoTitle 

五人は苦労しますね。
ミレーヌを救出するってだけで大変なのに、そこにガラルドを抑えて文化財を守るという仕事も増えるわけですから。
ガラルドと一緒にいると、個人の能力が養われそうですね。
いっそ全員フライパンで戦えば、文化財も無傷なんじゃ…笑。
更新お疲れ様です^^

Re: NoTitle 

デジャブ様、こんばんは(*^_^*)

いつもありがとうです(//▽//)
戦う場所を離れると、わがまま坊主のガラルドさんに、5人は振り回されてますw
独りじゃどうにもならないから、頭数を増やされたというのが実情かと(笑)
全員がフライパンで戦うのは思いつきませんでした(>▽<)b
めっちゃ笑って、腹筋が痛いですw

まだまだ続きますが、時間が許せばお付き合いくださいね!
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