「英雄のしつけかた」
第三章 死神と呼ばれる少年

第63話 今わかること 2

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「は?」

 訳がわからなかった。
「まだ寝ぼけてんのか?」
「何の話だ?」
「だいたい出かけたって、おっそろしく目立つ熊には何もできないだろうが」

 バカじゃないのか? とそろって口をそろえられ、ガラルドは座りなおした。
「そこだ。お仲間は待ってりゃいい。で、どうだった?」

 訳のわからん奴だと、そろって頭を悩ませた。
 説明をしているつもりだろうが足りていないので、何の話かさっぱりわからない。

「自分だけで納得しやがって」と皆がブツブツと文句を垂れたが、ガラルドなりに何か心境の変化があったことは理解した。
 大人しく待っていたなら悪い変化ではないし、そのままにしておくに限る。
 気味が悪くても、いい事に違いなかった。

 後でサリにでも詳しく聞こうと思いながら、それぞれ持って帰ってきた情報の交換を始めた。
 王都の中には特別な動きはまったくなかった。
 ミレーヌの姿を最後に見たのは商店街の人間で、大通りに出てすぐぷっつりと姿を消した。

 とりあえず調べてみたものの、個人的にサリやミレーヌが恨みを買っているとか、トラブルに巻き込まれる要因は一つもなかった。
 それに、誘拐される程の巨大な資産も目のくらむような美貌も、第三者的視点からミレーヌにはないのはハッキリしていた。
 大輪の薔薇ならともかく、コロコロしたアライグマでは誘拐のリスクを負う価値がない。

 次は流派がらみと予想したが、多国間の和平条約が再度締結されたばかりだし、異国の間者も直接ガラルドへ手を出すのは控えている。
 不安定な情勢だからこそ、国際問題に発展する動きはまったくないと結論付けてかまわない。

 国王と流派との親密度が上がったことを快く思っていない輩もいる。
 だが、利害を考えれば互いに損はないので、国内の抵抗勢力も今は身を潜めている。
 それこそ水面下の動きだけだ。

 流派へもガラルド個人へも、対抗する大きな動きは、今のところない。

 結論。
 このタイミングでちょっかいをかけることを慎重なほど周囲が控えていて、手を出す者はいなかったのだ。

 しかし、ほんの偶然で誘拐されたにしては、やけに綺麗に痕跡を断っていた。
「なんだ? ないないづくしじゃないか。だが、帰ってこんぞ。訳がわからんな。王都ばかりで退屈になって、隣町でも買い物に出たか?」
「勝手なあんたと一緒にするな」

 ム~とガラルドが首をひねったら、街道に出ていたサガンがポコンと頭をはたく。
「少し黙ってろ。あんたが口を開くと話が長引くだろ? ひとつ、興味深い話があった」


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