「英雄のしつけかた」
第三章 死神と呼ばれる少年

第48話 帰還の日に 3

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 落とし物だとカゴが届けられた時。
 ガラルド達は遠征から帰宅していた。

 デュランから王都内の近況報告を受けつつ、ちょうど旅装束をほどいているところだった。
「持ち主は?」
「帰宅されていませんか?」
 届けに来た騎士に不思議そうに問い返されて、思わず全員が視線を交わし合った。

 のんびりしていてもしっかり者のミレーヌが、財布ごとカゴを落とす訳がない。
 百歩譲って、転んでカゴを落としたとしよう。
 しかし、財布だけはしっかり握っているはずだ。
 起きあがる時に、道端に転がる小銭ぐらい発見してもおかしくない。
 そのぐらいちゃっかりしたところがある。
 なのに、財布が入っていた。
 これはかなりの非常事態に違いなかった。

 とりあえず「どうもありがとう」と適当に話を合わせて、早々に騎士にはお引き取り願った。
「財布に住所の書いた紙が入っているか…確かに騎士殿のおっしゃられるとおりだけどな」
「こりゃまずいんじゃないか?」
「このパルプ紙は東の国に流通してない。スカルロード産だろう?」
「南部なら簡単に手に入るだろうが、王都じゃ商人があつかわないさ。関税が高くて割に合わん」
 カゴの中から取り出した紙を指にはさみ、キサルが目の前でつまらなそうに揺らした。
「だいたい、ミレーヌ様は字が書けんぞ」

 それは、特に珍しい話ではなかった。
 下街生まれだと当たり前だから、代筆屋が代読業も兼ねて繁盛している。
 ミレーヌはあれでも努力家なので、食堂の一覧表から隊員の名前だけは学ぶ努力をしていた。
 まぁ、その程度のレベルだ。

「なんだと?」
 ガラルドが眉根を寄せた。
「なんだ、知らなかったのか?」
「アレだけ付きまとってたくせに、鈍い奴だな」
「些事は俺らに丸投げだから、惚れた女のことすらわからんのさ」

「そんなことは誰も聞いとらん」
 ミレーヌのストーカーに似た言われように、ガラルドはさすがにムッとした。
 旅装束を外したものの、皆が探索の準備を整えているのを不服そうに睨みつける。
 ミレーヌが字を書こうが書くまいが料理だの家政婦としての腕には何ら問題はないと、少しずれたことをブツブツとつぶやく。

「では、ミレーヌはどこだ?」
 俺が聞きたいのはそこだと腕を組む。

「さぁな、わかるわけがないさ」
「まぁ消えたのは確かだろ?」
「落し物です~とカゴが届くぐらいだ。人目につかなかったってことだろうな」
「さっきの騎士殿の様子じゃ、手がかりも少ないだろうが捜し方はあるさ」
 口調だけは普段の軽口と大差なかったけれど、全員の表情は厳しくなっていた。

 今のところは行方不明。
 そうとしか言いようがなかった。


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ミレーヌが消えたと知って・・・ 

ガラルドが暴走するかと思いきや、意外に冷静ですね(笑)

こんにちは、更新おつかれさまです^^

さすが肝が据わっておりますね。
あの少年の真の目的は何なのでしょう、先が楽しみです。
「死神と呼ばれる少年」というタイトルからして、不吉な感じしか受けませんが(笑)

Re: ミレーヌが消えたと知って・・・ 

こんにちは!

いつもありがとうございます♪

ガラルドさん、王都は安全と油断しきっているので、実はポヤンとしていましたw
熊さんたちからどういう扱いを受けるか、長っていったい? なので、お楽しみに! ←え?

死神君、設定ではガラルドさんの次ぐらいに濃い古い血の持ち主です。
普通の人ならそばにいるだけでビビっちゃうぐらい、不吉な存在のはずなんですよw
でも、そういうのに全く影響を受けないミレーヌさんが相手だと・・・・・・いついかなる時もミレーヌさんですから(笑)
ちょっぴり(?)残酷表現も出てきますが、基本、ほのぼのコメディなので、楽しんでもらえるといいな~♪
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