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「英雄のしつけかた」
第二章 英雄と呼ばれる男 

第40話 不滅の丘 1

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 舌をかむと後から言われて、必死で口を閉じてガラルドの上着をつかんだ。
 気がつくと空に近い場所にいて、ものすごい速度で街並みが後ろに流れていく。
 屋根の上を走っているのだと理解した頃には、王都を出ていた。
 気がつくと恵みの森の中にいて、すぎる木立が風にざわめく様を美しいと思った。
 前を見たら吹きつける風の強さに息がうまくできず、ガラルドの胸にしがみつくしかない。

 速い。
 風になっている。

 ガラルドは普通の顔をしていて、女一人を抱えて走っているとは、とても思えなかった。
 あっという間にリリス平原に出た。
 どこまでも広がる草原を駆け抜けて夢か現実かわからない程、幻想的な小高い丘に辿り着く。

 降ろされて、なんて美しいのともらす。
 おとぎ話に聞く、天界か桃源郷のようだった。
 うっとりとしているミレーヌに、すごいだろうとガラルドは自分の手柄のように自慢した。
 ここがどんな場所か簡単に説明する。

 世界が創造された場所という伝説を持っているので、「不滅の丘」と呼ばれる聖地だった。
 伝説を裏付けるように生の力に満ちた場所で、この丘には四季を問わず様々な果樹が生い茂り、休む間もなく果実をつけている。
 それだけではなく、様々な季節の美しい花が一度に咲き乱れていた。

「ほら、持って帰れ」
 ガラルドはオレンジをいくつか木からもぐと、ミレーヌに投げた。
「こういう綺麗な場所だったら、おまえも好むだろう? 邪魔も入らんしな」

「ええ! なんて素敵なのかしら! それになんて大きな樹! 何人ぐらいで幹を囲めるかしら?」
 何よりも目を引いたのは、一本の巨木だった。

「ああ、あれか。特別な樹だからな」
 大人八人がかりでも手が足りない程、巨大な樹だ.
 それでも息吹に満ち、葉も青々とした美しい広葉樹だった。
 この世界の創世と同時に生を受けたとされる古木は、「はじまりの樹」と呼ばれていた。

「この世界と同じ歳らしいから、こいつはずいぶんと年寄りのはずだ。ヨボヨボには見えんが」
 ヨボヨボって……創世の樹ならば、姿を現さない神々と等しい存在のはずなのに。
「どうしてそんな夢のない言い方をしますの?」

「本当のことだぞ? 確かめようもないがな」
 もう、とミレーヌはふくれた。
「そんなこと、確かめる必要なんてありませんでしょう?」

 まったく、もう!
 会話が微妙にかみ合わない。
 どうして漫才のようになるか謎だ。
 デートの場所としては最高なのに、ガラルドが相手だとムードや雰囲気はぶち壊しだった。
「せっかく見直したのに……」

 それでも、気を取り直す。
 わざわざ、ミレーヌのために選んだ場所なのだ。
 悪言や感性に目をつぶりさえすれば、宝石やドレスを見に連れていかれるより、ずいぶんとミレーヌ自身のことを考えている。
 あんがい、他人のこともよく見ているのかもしれなかった。

「王都のこんな近くに、こんな素敵な場所があるなんて、わたくし、知りませんでしたわ」
 深呼吸をした後で、できるだけ優しい表情で微笑んでみせた。
 ガラルドは別に感慨を抱くではなく、いつもの尊大な調子でうなずいた。
「それはそうだ。惑わされない奴しか来れない」

 街道の整備されていないこの場所に来るまでは魔物もいたずら好きの妖精も出る。
 だからこそ、神聖な力に満ちた聖地だとわかっていても、恵みの森同様に好んで足を踏み入れる者は少ない。

 精霊も住んでいると説明されたが、異形の住みかには程遠いので、ミレーヌはとても不思議だった。
 人間以外の存在は、神の他は関わってはならないものだと教わっていたけれど。
 善きものと悪しきものがいるのかもしれない。

 ミレーヌの表情で考えていることを読んだのか、ガラルドは淡々と言った。
「普通の人には判断できるもんか。どっちもおまえにとっては、そんなに変わらん。俺から離れるなよ。ここにいるものは善きものだが、人をからかって遊ぶからな」
 ハイ、とミレーヌはうなずいた。
 命には関わらなくても、それなりに危ないちょっかいも出されるのだとわかった。

 それでも。
 この丘には魔の気配一つなく、誰も近づかないのが不思議なほど、聖別された神殿のように清浄な空気に包まれていた。
 不思議と季節もなくて、桃とリンゴとオレンジが並んでいるのをひどく不思議な思いで見つめた。

 これが創世の力を残す場所である片鱗だと、ガラルドが延々と哲学的な説明をしかけたが、けっこうですわとミレーヌは断った。
 なぜここに創世の力があるのかなんて、歴史から説明されてもミレーヌには理解できない。
 美しく綺麗な場所を丸ごと楽しめたら、それだけで良かった。


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