「英雄のしつけかた」
第二章 英雄と呼ばれる男 

第34話 そしてため息をつく 3

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 ただ一つ、心からガラルドに感謝できることがあった。
 サリを非常に大切にしている。
 コレしか感謝できることはないのだが。

 いきなり揺り椅子を土産だと持ち帰って、居間を兼ねている食堂の自分のスペースの横に置くとサリを座らせた。
 福招きの猫台にピッタリだなんてご満悦なぐらい、気持ちの中心に置いていた。

 縁起物と同じ扱いはどうなのかしら?

 そう頭を悩ませたが、陽のあたる場所で編み物をしているサリは、確かに福招きの置物のようだった。

 ガラルドは少しでも暇があれば、サリサリとそれこそ子犬のように、家の中でくっついていてまわっている。
 それだけではなく、短気で辛抱がまったくできない日常が嘘のように、耳の遠いばあさんの語りに辛抱強く付き合っている。
 孫のミレーヌにもできない芸当だった。

 会話の内容は、ミレーヌが聞くと要点が飛びまわって、まったくかみ合っていない。
 だが、ガラルドは奥深そうな顔をしてうなずいていることが多いし、サリは子供を相手にするように頭をはたいたり、なでたりしていた。
 昔語りをねだる子供と、その相手をするおばあさんの図にしか見えないけれど。

 薬師の能力は使わなくても、経験を生かして全身全霊でしつけをしてる最中だからそっとしとくよ、なんて隊員たちも仕事よりも二人の会話を優先して見守っているようだった。

 ミレーヌにとっては謎だったが、サリは隊員たちからも尊敬されていた。
 人生経験が豊富だから、というだけではないらしい。
 どうしてですの? と聞いたこともある。
 だが、尊敬に値する方だからだよ、としか教えてもらえなかった。

 ミレーヌにはなんのことかまったくわからなかったが、サリの影響なのか少しはガラルドに変化があった。
「行ってくる」とか「帰った」とか、必ず誰かに声をかけるようになった。
 確かに、花街に出かけるときもミレーヌまでわざわざ報告しにくるくらいだから、仕事でかかわる隊員たちにもマメに行き先を伝えているらしい。
 不意に姿を消してしまうような気まぐれな行動がなくなったと、みなが喜んでいた。

 それだけではない。
 とりあえず食事時間は守るし、横になる時は自分の部屋に入って休むし、中庭や玄関のソファーでグーグー寝ることも減っている。

「お二人は猛獣使いだ!」
 なんて隊員がそろって喜んでいたので、今まではそうとう気ままに自分の考えだけで動いていたのだろう。

 制御の利かない猛獣扱いされる流派の長ってどうなの?

 実力はともかく、長としてまったく役に立っていない存在なのでは?と思ってしまう。
 だけど非常時においては決断力も判断力も行動力もあって、第三者の視点に戻れば頼りがいもあり魅力のある人物なのは確かだった。

 つまり、ガラルドはミレーヌにとっては不確定要素が多すぎて、判定不可能な人物なのだ。
 確かにむかつくことも多いが、連日のように率直な求婚を受けると、年頃なのでそれほど悪い気はしない。
 素直にうなずく気になれないのは残念だけれど。

 ハァァ~とミレーヌは長いため息をついた。
 もっとまともになってくださればいいのに。
 そんなことを思いながら過ごす毎日である。


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