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Making Twilight

そして魔女は旅に出る 最終話

 ←そして魔女は旅に出る 3 →ひとまず
 チュンチュンと小鳥がさえずる平和な朝がきた。
 吹き飛んだ屋根は綺麗に焼失し、澄みきった青空が天井代わりに広がっている。
 空だけ見ればここちよい一日の始まりである。
 しかし、開催されているのは反省会だった。

 「で? この落とし前、どうつける気だい?」
 イライラと尖った幼い声はやけに圧力があり、寝起きで頭がボサボサの大人三人が沈痛な面持ちのまま肩を並べて、床にちんまりと座っていた。
 椅子に座ったままブカブカの袖をうるさそうにたくし上げ、十歳にも満たない少女は手にした杖で並んだ頭をゴンゴンゴンと順番に殴りつける。

「このクソガキどもが! あたしの老後を返しな!」
 そう、怒っているのは姿こそ幼く変化しているものの、偉大な魔女その人である。

 軍勢が去った後で瓦礫をできるだけ片よせ、かろうじて無事だった台所で、精いっぱい手をかけてもてなしの料理を作ったのは昨夜のことだ。
 田舎料理ではあったがありったけの食材を使って、思いつく限りの料理を食卓に並べた。
 弟子たちが持ち込んだ銘酒の数々も封を切り、ひさびさに酔いに身を任せた。
 加齢で鈍く痛みはじめていた膝も、自宅を失った不安も、気持ちよさに溶けていく。
 笑い声の絶えない良い宴会だった。

 やれやれ、家を壊しちまうなんて困ったもんだねぇ……と思いながらも、昨夜の魔女は幸せだった。
 家は失ってしまったけれど、どこにいても弟子と自分との関係は変わらない。
 おそらく、一生の宝物になる時間だと、心からそう思っていた。

 ほろ酔いで気分良く眠り、目が覚めたらコレである。
 驚くほど魔女は若返り、子供の姿になっていた。
 幸いなことに変化したのは身体だけで、記憶も精神も老齢の魔女だった。
 これで記憶まで飛んでいたら、想像だけで鳥肌の立つ恐ろしさだ。

 目覚めてすぐに異変に気付き、さすがの魔女も驚きの声を上げてしまった。
 その声で次々に目覚めたジークたちも魔女の姿を見て青くなったが、狂乱する一同の中でたった一人だけ「か、可愛いー!」と叫ぶ人物がいた。

 ルリと名乗った治癒師である。
 長身で均整のとれたマッチョで顔立ちも綺麗なのだが、言葉にしがたい派手さがあった。赤く爪を染めて濃いルージュを唇にさし、話し方も色っぽくシナをつくるので性別を越えた存在感を持っているのだ。
 男も女もどっちも好きだけど、あたしにはドレスが似合うと思うの。なんてどぎつい事を、今日の天気を語るように言い放つ。
 身につけているのも華やかな色彩の女物で、混戦の中では野太い声を上げて昆をふり回し、兵士たちをなぎ倒していた猛者と同一人物とはとても思えない。
 格闘もできる治癒師は需要が高いのに、ジークと出会うまで一人旅をしていたのは外見と性癖のせいだろう。

「ほら、まあ……子供になっちゃったものは仕方ないしさ。魔女様がいれば心強いじゃない? あたちたちと一緒に旅に出るとか、ダメ?」
 ダメ? とかそういう問題ではないぞと、一同から無言の圧力がふきだした。
 しかし、周りから向けられる白い目も気にせず、ルリは嬉しそうに両手を組んでくねくねと身体をよじらせている。
「美少女と一緒に旅なんて嬉しいー! あたしが衣装も選んであげるね♡」
 今にもスキップしそうな浮き立った様子に、こいつが元凶だと誰もが思った。

「おい、てめぇ……なにをした?」
 キリキリ吐きやがれ! とジークがつかみかかってその首を絞めると、ルリはあっさり白状した。
 グダグダに全員が酔っ払った頃を見計らい、遺跡で発見した若返りの小石を粉にして、魔女の飲んでいる酒にちょっとだけ混ぜたのだと言う。

「ほら、私ってまだ若いじゃない? うかつに飲んで生まれる前まで戻ったら消えちゃうもーん!! 魔女様ならちょうどいいところで止まると思ったのー! ごめんなさーい!!」
 とんだ言い訳である。
 魔女が杖でルリの頭を殴るよりも早く、ジークが飛びかかって取っ組み合いがはじまった。
「俺のババァを返せー!」

 響いたジークの叫びに、魔女はこめかみを指で押さえた。
 確かに身体はババァではなくなったが、この世から消えたわけではない。
 つかみあってジタバタともがき暴れる様を見守るだけでも疲れるのに、冗談みたいなやり取りが飛び交い耳まで疲れる。
「一体いつ、あたしがお前のものになったんだい?」
 ぼやいたけれど、聞く者はいなかった。

「ケンカ、ダメ」
 ドルムと名乗った斧使いの戦士が、ジークとルリの間に仲裁として割って入る。
 亜人の血を引いているらしく浅黒い肌はうろこ状で、背も低くがっしりした体格をしている。
 無口な性質というより舌の形が人間と少し違うようでうまく発音できず、話すのは苦手らしいが多彩な言語を理解してる理知的な男である。
 昨夜の見識深い語らいは魔女の心をずいぶん和ませてくれたし、良く見ればルリも耳の形や瞳の虹彩が人とは違い、装い方は上手だが半魔の血筋なのだろう。
 まっとうな普通の人と暮らしたことも少なそうだから、常識が違っても仕方ないかもしれない。
 ドラゴンの時といい、旅の仲間といい、ジークは人ならざる者と縁があるようだ。

 やれやれと魔女は肩をすくめた。
 良い弟子が、良い仲間を連れて帰ってきた。
 良い話で終わるはずだったのに。
 阿呆の弟子の仲間は、やっぱり阿呆だった。

 阿呆の弟子の師匠は、輪をかけて阿呆な存在かもしれないけれど。

 いつ終わるともしれない取っ組み合いを続ける三人をほっておいて、魔女は家の外に出た。
 半分崩れて形ばかりの扉を開け、見慣れた風景をそっと見降ろした。
 視線の高さはずいぶん低くなったけれど、小高い丘の上に立つ家からは草原の果てまでよく見える。

 魔女は自分の腕を軽くさすった。
 馴染みのない、小さな腕だった。 
 みょうちきりんな粉のせいで若返ったけれど、効力がいつまでもつのかもわからない。

 明日には老女に戻るのか?
 それとも、幼女から着実に年齢を重ね、再び老女になるまで生きることになるのか。
 わからないことだらけだ。
 もっとも、魔女はどちらでもよかった。

 青い空。緑の丘。
 赤い屋根は消えたけど、愛しい我が家。
 偉大な魔女と呼ばれた老女が、終焉の地に選んだ愛しい場所。
 サヨナラだ、とその景色に短く告げた。

 この世界には魔女の知らないモノであふれている。
 美しい、この世界を心に焼きつけられたら、それで良い。
 今の心はその姿と同じく、未知に惹かれる少女に戻っていた。

 見たい、聞きたい、知りたい。
 尽きることない未知の世界への渇望は、歳を経ても消えていない。

 偉大な魔女は冒険に明け暮れた。
 戦いも冒険も、弟子とその仲間に任せて、強欲な魔女と呼ばれるまで、世界を渡り歩くのも悪くないだろう。

 仲間はいる……可愛い弟子も。
 この足が動き続ける限り、彼らと一緒に歩いていこうと決めた。

 風が誘うように頬をなでて過ぎていく。
 貪欲な笑みを浮かべる魔女は、未知を訪ねる新たな旅に出るのだ。

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