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小毒なボッチ思考にゃん(ΦωΦ)

キッチン(読書感想?)

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作品名  キッチン
作者名  吉本ばなな
発行所  角川文庫(初刊行は福武文庫)


「私がこの世界で一番好きな場所は台所だと思う。」

 そんな書き出しの一文を思い出したのは、祖母が亡くなった日だ。
 仮通夜の日だったか、通夜の日だったか、それは忘れてしまったけれど。

 やることはいっぱいあって、とにかく慌ただしくて。
 人が一人、この世界から消えてしまう、その大きさを感じる間もなかった。
 気持ちはポカーンとしたまま、とにかく平静を保つのを心がけようと自分に言い聞かせて、個人的な苛立ちやもどかしさを横に置いて「やるべきこと」に手をつけている間。
 唐突に浮かんだその一節がずっと頭から離れてくれず、気になって気になって、とにかく読みたくて。
 私の人生の中で、この本を読むのにピッタリくる時間は、今この瞬間しかないと思ってしまうぐらい、強く思いだしたから、葬儀が終わった後で押し入れの中をあさった。

 キッチン。
 記憶力に自信はないのだけど、奇跡的に題名も覚えていた。
 ページをめくると、ほのかに光る街頭とか、夜に静かに響く冷蔵庫の音とか、他愛のない会話とか。
なにげないことが積み重なる、ひたすら優しい世界が本の中にあった。
 なんでもないようなことが特別で、些細なことが愛しい感じがして、なんとなくこの本が手放せなくなってしまった。
 それから初盆が過ぎてしまうまで、どうしてか自分でもわからないけれどカバンの中に入れて持ち歩いていた。

 人が一人、この世界から消えてしまうって、身近にいる人以外には関係ないことだけど。
 当事者にとっては関係がありすぎて、理解が追いつかない。
 生まれる前から同じ場所にいた人だけがすっかり消えてしまったのに、日常のいたるところに「その人が今まで生きていた時の痕跡」が独特の気配をまとったまま色濃くあって、なんでもないようなことが切なくなる。
 今まで当たり前に居てくれた場所に、その人だけが永遠に不在なのだ。

 つらいとかかなしいとか泣きたいとか。
 そういった感情がスコーンとどこかにいってしまい、ポカーンとした穴があいた感じは言葉にはしにくい。
 気持ちの置き場がないという言葉があるけれど、置くべき気持ちそのものが迷子になったような空白。
 それは私だけのものなのだけど。
 あの日、唐突に思いだした一節。

「私がこの世界で一番好きな場所は台所だと思う。」 

 私の中心に心の椅子があって。
 座るべき気持ちの中心が迷子になったとき、本を読みたくなるのかもしれない。
 今はやるべきことがあるからいろんなことを保留にしたいから、主人公のみかげにちょっとだけ座ってみる? って、少しだけ席を譲っておやすみして、そこから自分の様子も見るみているような感覚……とでもいうように。
 でも、向き合う気がまえとか絶対に読まねばという焦燥感もなくて、挨拶をするみたいに気軽な感じで、気がついたらページをめくってしまう。

 人が本当に疲れた時、疲れている最中は気がつかないのかもしれない。
 やるべきことのほとんどが片付いて次にやるべきことがもうないと気がついたとき、もう自分を中心に動いていいんだよと言われたとき、空白が襲ってきて動けなくなる。
 自分自身を癒すとか、疲れている自分に気がつくとか。
 祖母の初盆が終わった後で心の穴に気がついて、それが思いのほか大きいから言葉がうまく出てこなくなったりしているのだけど。

 自分でも何を言っているのかよくわからないけれど、祖母を亡くしてから優先すべきことを手につけているさなか、キッチンのことを思っていた。
 ただそれだけのことが、とても不思議。

 自分でも不思議だけど、台所が好きだ。
 台所から生み出されるさまざまな料理も好きだ。
 ちょっとぐらい失敗しても、生きていたらお腹がすくし、美味しいものはどこまでも美味しい。

 気持ちが少し疲れてしまって、休んでるわけでもないのになんとなく動けなくなって、またなんとなく動けるようになって、何かを始める場所が必ずあって。
 それが、台所だったら幸せだと思う。

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