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Making Twilight

僕の戦い

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「しばらく、そのツラ見せんじゃねぇ」
 容赦ない言葉で、僕は思い切り不愉快を表明する。
 授業が終わって解放感に満たされた教室で、これほど相応しくない言葉もないけどさ。
 俊介の奴が不意打ちでとんでもない言葉を投げつけてくるから、さすがに流せなかったんだよ。

「なぁ、まこっちゃんてさ、本当に男なの?」
 なんてさ。
 もう中学生なんだぞ。

 性別そのものを疑うなんて、いくらなんでもひどい。
 確かに僕は身長が女子と変わらないぐらい低いし、炎天下に出ても赤くなって皮がむけるだけで健康的な日焼けもしない餅肌だし、髪の毛も油断すればクルクルカールするぐらい癖が強いから天使の肖像画に出てきそうって言われる事が多いけどさ。
 それにプラスして、線が細かったり女顔だったり、疑われる要素は少なくないってのも知ってるけど。
 そうだね~なんて簡単に受け入れること、できるわけないだろう。
 手が出なかっただけましだ。
 部活や帰宅でクラスメイトは早めに姿を消していて、教室に僕ら二人だけなのは幸いだった。

「そのまこっちゃんってのもやめろよ」
 まことって振り仮名は打つけれど、一応、新撰組の誠で男らしさが由来なのに。
 中学に入学してからニョキニョキと雨後のタケノコのように身長を伸ばし、野生のシルバーバック並みにガッチリカッチリした腕と逆三角形の身体を手に入れた俊介には、細っこいままでいる僕の気持ちは伝わらない。
 僕のコンプレックスを思いきり刺激する表情で、俊介は「似合うのに……」とぼやいた。

「だいたい、子供の頃は一緒に風呂に入ったじゃないか」
 生まれたままの姿をお互いに見つめあったことだってあるのに、疑いと未練の入り混じった視線を向けられるいわれはない。
 幼馴染みなのに! と強く反発すると、俊介は複雑な表情でポリポリと頭をかいた。
「だってさ、ぜったいおかしいって。なんでそんな華奢で可愛いわけ? 声だってソプラノのまんまだし……今は上がツンツルテンで、下が出っ張ってるかもしれないけどさ。そのまんまってアリエナイよな?」

 おい。今のままがアリエナイって言ったか?
 漫画の見すぎじゃないの?
 出っ張ってるかもしれないってレベルではなくて、ついてんだよ。
 オマエ、僕の大事なトコロが着脱式だとでも言うのか?
 衝撃が強すぎて、返すべき言葉がラインダンスみたいに頭の中をグルグル回る。

「そろそろ、こっちも出っ張ってきてもいいんじゃない?」
 第一ボタンを開けていた僕の襟元を、俊介の指がグイッと引っ張った。
 思いのほか強い力だったのだろう。
 第二ボタンが、プツッとはじけ飛ぶ。

 あ、制服なのに……と思いながら、コロコロと床を転がって行くボタンを目で追っていたら、細い指先がそれを拾い上げた。
 クラスメイトの秋穂さんだった。
 そう言えば日直だったから、職員室に日誌を届けて戻ってきたのだろう。

 シャツの胸元をのぞきこむような姿勢のままフリーズする僕等と目が合うと、秋穂さんは少し困ったように肩をすくめた。
 開いたままの教室の扉から僕たち二人のただならぬ様子に、入るタイミングをはかっていたのかもしれない。

 気まずい。
 ただ、すぐに立ち直った様子でスタスタと普通に近寄ってきて、そっと僕にボタンをくれた。
 コロン、と手の中に落ちてきたボタンは、秋穂さんの手の熱がうつって少しだけ暖かかった。
 特別なことは何も言わず自分のカバンを手にすると当たり前の調子で扉まで歩き、秋穂さんは振り向いた。

「ごめんね、邪魔しちゃって」
 花のように微笑んで、扉は閉められた。
 少し早足で遠ざかって行く足音に、僕はようやく正気に戻る。
 いまだに俊介は僕の襟元を広げて、あまつさえのぞきこんだ格好のままだ。
 タラタラと冷や汗が背中を流れ落ちる。

「わー笑顔で去られると痛いぞ」
 ようやく動けるようになった俊介からこぼれたのは、乾いた声だった。
 それなりに感情のこもったリアクションがないと否定も肯定もできないとぼやくから、僕は「あほかー!」と怒鳴りつける。
 僕らも驚きで動けなかったけれど、秋穂さんもかなり驚いていたに違いない。

 とんでもない誤解をされた予感がする。
 出っ張る予定のない僕の胸をのぞきこむ俊介がすべて悪い。
 秋穂さんは見惚れそうな笑顔で去ったけれど、邪魔って、邪魔って、邪魔って……脳内輪舞が怖かった。

「しばらく、そのツラ見せんじゃねぇ!」
「そりゃムリだろ。クラスメイトだし」

 冷徹な俊介の突っ込みに打ち消され、僕の叫びはガランとした教室に虚しく響く。
 いいや、こんなことで負けてたまるものか。
 変態の俊介に付き合う義理もないんだ。
 僕は健全な男子中学生だぞ。

 秋穂さんの誤解を解くための戦いは、明日からはじまる。

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