「英雄のしつけかた」
第二章 英雄と呼ばれる男 

第27話 突然の! 3

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 だが、いつものガラルドだとデュラン達は安心して、ようやくホッと息をついた。
「おお、正気だった!」
「驚かせるなよ、まったく」
「バカを言うな。勝手に騒いだんだろうが」

 ガラルドはぼやき、顔色を失っているミレーヌに向き直った。
 マジマジとその顔を見つめ、やっぱりアライグマだと嬉しそうだ。
 褒めているつもりらしい。
「実に面白い顔だ。美人でもないし、色気もないんだから、この先だって結婚できる保証などないぞ。歳だって随分くってるじゃないか」
 一八歳以上ならもう行き遅れだと遠慮がない。

 プルプルと怒りに震えながらミレーヌは、思わずフライパンをふりあげた。
 プチッと切れていたので、ブンッとそのままの勢いで振りおろした。
「ふ、ふざけないで!」
 うおっと叫んでガラルドはギリギリで避けた。

 振り回される全てを避けられず、手の甲で受けるとゴイン!と澄んだ鉄の音がした。
 ジーンと骨まで衝撃が響いた。
 こんなものをまともに喰らえば、次はタンコブではすまない。

 今のはかなり危なかったとガラルドはドキドキしながら、ベッドの端まで跳んで逃げる。
 戦場などよりもずっと鬼気迫る何かが、炸裂するミレーヌのフライパンにはあった。

 殺気とか、勝とうとする気合とは違う。
 あふれる強い意志の力で、当たるのが自然だと勘違いして、身体が吸い寄せられる気がした。
 魔法とも呪いとも古い血とも縁のない、今まで感じたことのない不思議な力だった。
 訳がわからないだけに恐ろしい。

「なぜ怒るんだ? 本当のことだぞ」
 上ずった声で弁解する。
 まったくわかっていないガラルドに、ツンッとミレーヌは顔をそむけた。
「けっこうです!あなたのような方にもらわれなくても、間に合ってますから!」

 きつく言って、ミレーヌはサリに笑いかける。
「おばあちゃん、わたくし、先に休みますわ。明日も早いもの。皆さま、失礼します」
「ハイハイ、おやすみなさいねぇ」
 丁寧に礼をして扉からミレーヌは出て行った。

「失礼しちゃうわ、誰がアライグマですって?」
 などとミレーヌは非常に憤慨したまま、大きな声でぼやきながら階段を下りていく。

 目をパチパチと大きくまばたきして、ガラルドは閉じられた扉を指差した。
「間にあってるだと? 本当か?」
 さぁね、とキサルは冷たく応えた。
「コロコロしてるのに、物好きも多いんだな」
 俺だけじゃなのかと耳をいじっている。

 それでも。
 まだ未婚なのは間違いないとか、見た目より遥かに気が強いとか、どうやら本気のようでブツブツつぶやいている。

 ガラルドのノーマルは常識から外れているのは知っていたけれど。
 ハァッとため息がもれた。
「なぁ、それで口説いてるつもりか?」
「俺たちはあんたが大真面目なのは理解した」
「だがなぁ、いくらなんでも、コロコロとかアライグマとか言われて、喜ぶ女はいない」
「嫌われたくてやってるようなもんだぞ」

 何が? とガラルドはキョトンとした。
 あのふかふかの丸さやチマチマした手の動きが可愛くて、褒めているんだと不思議そうだ。
 嘘だの駆け引きだのに満ちた王宮や、戦場ではないのだ。力を抜ける自宅の布団の上で、自分に正直で何が悪いのかまったくわからない。
 だいたい、正直でいられそうな女が目の前にいたから、結婚を申し込んだだけだ。
 それのどこがいけないのか?

「なぁ、何が悪いのかわからない限り、お前、まともに口もきいてもらえんぞ」
 気の毒そうにラルゴが進言した。
 もちろんガラルドに届くなんて思っていない。
 付き合わされるミレーヌが気の毒だと思っただけだ。

「善かろうが悪かろうが、これが俺だ」
 ドーンとガラルドは胸を張った。

「確かにそうだろうよ」
 なんだか反論する気も失せた。
 ミレーヌにはその真っ正直さは裏目に出て、永遠に届かないだろうが。

 気の毒に、と皆で口をそろえる。
 ガラルドが本気になればなるだけミレーヌに軽蔑されそうで、見ている分には面白いが少々落ち着かない毎日になりそうだった。


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~ Comment ~

 

椿ちゃん…


おもしろすぎて困るぅぅ(m´□`m)

Re: タイトルなし 

こんにちは~akoさん、ありがとう❀❀

面白がってもらえてうれしいです☆
アニキ臭とおっさんくささが漂っているので(^▽^;;

こんなの書いて、私ってもうお嫁に行けない~ww
管理者のみ表示。 | 現在非公開コメン卜投稿不可です。

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