虹猫椿

まったり恋愛・日常・友情などをテーマにした、オリジナル小説や詩も掲載しています。お気軽にどうぞ♪

僕の戦い 

Making Twilight

「しばらく、そのツラ見せんじゃねぇ」
 容赦ない言葉で、僕は思い切り不愉快を表明する。
 授業が終わって解放感に満たされた教室で、これほど相応しくない言葉もないけどさ。
 俊介の奴が不意打ちでとんでもない言葉を投げつけてくるから、さすがに流せなかったんだよ。

「なぁ、まこっちゃんてさ、本当に男なの?」
 なんてさ。
 もう中学生なんだぞ。

 性別そのものを疑うなんて、いくらなんでもひどい。
 確かに僕は身長が女子と変わらないぐらい低いし、炎天下に出ても赤くなって皮がむけるだけで健康的な日焼けもしない餅肌だし、髪の毛も油断すればクルクルカールするぐらい癖が強いから天使の肖像画に出てきそうって言われる事が多いけどさ。
 それにプラスして、線が細かったり女顔だったり、疑われる要素は少なくないってのも知ってるけど。
 そうだね~なんて簡単に受け入れること、できるわけないだろう。
 手が出なかっただけましだ。
 部活や帰宅でクラスメイトは早めに姿を消していて、教室に僕ら二人だけなのは幸いだった。

「そのまこっちゃんってのもやめろよ」
 まことって振り仮名は打つけれど、一応、新撰組の誠で男らしさが由来なのに。
 中学に入学してからニョキニョキと雨後のタケノコのように身長を伸ばし、野生のシルバーバック並みにガッチリカッチリした腕と逆三角形の身体を手に入れた俊介には、細っこいままでいる僕の気持ちは伝わらない。
 僕のコンプレックスを思いきり刺激する表情で、俊介は「似合うのに……」とぼやいた。

「だいたい、子供の頃は一緒に風呂に入ったじゃないか」
 生まれたままの姿をお互いに見つめあったことだってあるのに、疑いと未練の入り混じった視線を向けられるいわれはない。
 幼馴染みなのに! と強く反発すると、俊介は複雑な表情でポリポリと頭をかいた。
「だってさ、ぜったいおかしいって。なんでそんな華奢で可愛いわけ? 声だってソプラノのまんまだし……今は上がツンツルテンで、下が出っ張ってるかもしれないけどさ。そのまんまってアリエナイよな?」

 おい。今のままがアリエナイって言ったか?
 漫画の見すぎじゃないの?
 出っ張ってるかもしれないってレベルではなくて、ついてんだよ。
 オマエ、僕の大事なトコロが着脱式だとでも言うのか?
 衝撃が強すぎて、返すべき言葉がラインダンスみたいに頭の中をグルグル回る。

「そろそろ、こっちも出っ張ってきてもいいんじゃない?」
 第一ボタンを開けていた僕の襟元を、俊介の指がグイッと引っ張った。
 思いのほか強い力だったのだろう。
 第二ボタンが、プツッとはじけ飛ぶ。

 あ、制服なのに……と思いながら、コロコロと床を転がって行くボタンを目で追っていたら、細い指先がそれを拾い上げた。
 クラスメイトの秋穂さんだった。
 そう言えば日直だったから、職員室に日誌を届けて戻ってきたのだろう。

 シャツの胸元をのぞきこむような姿勢のままフリーズする僕等と目が合うと、秋穂さんは少し困ったように肩をすくめた。
 開いたままの教室の扉から僕たち二人のただならぬ様子に、入るタイミングをはかっていたのかもしれない。

 気まずい。
 ただ、すぐに立ち直った様子でスタスタと普通に近寄ってきて、そっと僕にボタンをくれた。
 コロン、と手の中に落ちてきたボタンは、秋穂さんの手の熱がうつって少しだけ暖かかった。
 特別なことは何も言わず自分のカバンを手にすると当たり前の調子で扉まで歩き、秋穂さんは振り向いた。

「ごめんね、邪魔しちゃって」
 花のように微笑んで、扉は閉められた。
 少し早足で遠ざかって行く足音に、僕はようやく正気に戻る。
 いまだに俊介は僕の襟元を広げて、あまつさえのぞきこんだ格好のままだ。
 タラタラと冷や汗が背中を流れ落ちる。

「わー笑顔で去られると痛いぞ」
 ようやく動けるようになった俊介からこぼれたのは、乾いた声だった。
 それなりに感情のこもったリアクションがないと否定も肯定もできないとぼやくから、僕は「あほかー!」と怒鳴りつける。
 僕らも驚きで動けなかったけれど、秋穂さんもかなり驚いていたに違いない。

 とんでもない誤解をされた予感がする。
 出っ張る予定のない僕の胸をのぞきこむ俊介がすべて悪い。
 秋穂さんは見惚れそうな笑顔で去ったけれど、邪魔って、邪魔って、邪魔って……脳内輪舞が怖かった。

「しばらく、そのツラ見せんじゃねぇ!」
「そりゃムリだろ。クラスメイトだし」

 冷徹な俊介の突っ込みに打ち消され、僕の叫びはガランとした教室に虚しく響く。
 いいや、こんなことで負けてたまるものか。
 変態の俊介に付き合う義理もないんだ。
 僕は健全な男子中学生だぞ。

 秋穂さんの誤解を解くための戦いは、明日からはじまる。
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チーンとレンジで野菜蒸し 

腹ペコのその時に

毎日、暑いですね。
こんなに暑いと「美味しいは正義だー!」なんて言っていても、台所に立つのが嫌になります。
だってさ、炎との戦いなんだもん!
いい歳して「ヤダもんー!」なんて言いたくなるぐらい、真夏の台所は暑い。
何もしなくても暑いのに、炎を出現させるなんて、なんの罰ゲームだ……夏はどこまでも苦手。
とはいえ、お腹はすく。
夏バテしていると「欲しくないなー」って時もあるけど、その「欲しくない」に流されると本格的に倒れてしまうし、冷やっこいものばかり食べていたら更にバテル。
それに、水分をキチンと取るためにも、麦茶は沸かさなくちゃいけないのです。
夏バテが忍び寄ってくる時には、消費火力を抑えながら暖かい食品を!
こんな時に活躍するのは電子レンジだよね☆

用意するのはキャベツ・もやし・キノコ・豚肉(ベーコンも良い)
まずはお皿に、食べやすい大きさに切ったキャベツともやしとキノコを盛り付ける。
その上に、豚肉ベーコンを並べ、軽く酒をふる。
ラップをして、電子レンジで5分ぐらい加熱。
あっという間に野菜蒸しの出来上がり~♪
味付けはお好みで~ポン酢でもドレッシングでも、お好みでOK!

加熱具合が弱いかな~ってたまに不安になるけど、電子レンジから出して2~3分置くと余熱で火が通ってます。
原理を調べてみたら、食品の水分をマイクロ波で振動させて加熱しているので、電子レンジから出してもしばらく加熱は止まらないそうです。

このレンジ蒸し、1~2人の少人数であれば、スーパーで売ってる野菜ミックスを利用すれば、丸ごと別々に買うよりも種類の多い野菜が摂れます。
袋から野菜をお皿に出して、豚肉かベーコンを乗っけて、酒ふってラップして、チーン!
それですぐに食卓に出せるって、いろんな意味で美味しいよ……できる人だよ。←おい!

毎日手をかけてちゃんと料理するのは理想だけど、それどころじゃない日ってあるからさ。
洗い物も減るし、体力も維持できるし、そういう節約もあっていいのさ、と思うのですよ。
うん、とにかく暑いから。
イキノビ優先の今日この頃……まる。

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タンデム・ジャンプ 

短編集 ふんわりと

「俺と冒険してみない?」
 そんな言葉に誘われて、私は空の上にいた。

 上空四〇〇〇メートル。
 富士山より高い位置なのに、小型飛行機は簡単に舞い上がる。
 見下ろせば足元の遥か下方に豆粒みたいな建物があり、人の存在なんてわからなかった。
 非現実な状況は、感覚を鈍らせるのかもしれない。
 現実の出来事なのに実感が持てなくて、高所恐怖症は発動しなかった。
 ただ、とにかく寒かった。
 気温はマイナス二十度ぐらいになるらしいけれど、それを教えてくれた松浦は沸騰しそうなほど興奮して振りきれている。
 すごいすごいとバカの一つ覚えみたいに同じ言葉を繰り返していた。

 確かに初チャレンジのスカイダイビングは嬉しいけどね。
 松浦みたいに無邪気にはじけるなんてとても無理で、高度四〇〇〇メートルにいても、私の気持ちはグズグズと濁ったままだった。
 快晴の空は、まぶしいぐらいの青なのに。

 そう。悪い夢に変えたい事が起こるから。
 先週、会社が倒産して失業してしまった。
 冗談みたいだけど、本当のことだ。
 予兆も予告もなかったし、本当に突然のことで、私自身もいまだに実感が持てずにいる。

 あの日の朝。
 いつもと同じように出社したら、扉に倒産のお知らせが貼られていたのだ。
 どんなに待っても扉は固く閉じられたままで、悪い冗談みたいな冷たい現実。
 どうしていいかわからなくて、声も出せなかった。
 激しく雨が降りしきる中で、傘に叩きつける雨音だけがうるさい。
 会社の入り口には、私と同じように茫然とした社員たちが立ちつくしていた。
 手にした傘が防いでくれるのは雨だけで、足元から崩れていきそうな不安は防いでくれない。

 今、側にいる昨日までの同僚たちも、明日からは二度と顔を合わせない人になるんだなぁって、ぼんやりと思う。
 うっとうしいほどの書類も、面倒だったコピー取りも、もう二度とやることはないのだ。
 いつまでもここにいても仕方ないのだけど、どうやって動けばいいのかわからなかった。

 どん詰まりの気分を一蹴したのは松浦だ。
 元気の塊みたいな声で「今こそ冒険の時だ!」なんて言いだしたのだ。
 陽気でポジティブな彼は、営業の中でもかなり目立つ存在だった。
「困難に打ち勝つには、冒険に旅立つのが一番なんだよ」
 そんな台詞であまりに自信たっぷりに誘いまくるものだから、落ち込んでいるのがバカバカしくなって全員が正気に戻った。
 そして付き合い切れないとばかりに、三々五々に散ったのだ。

 どんなに泣きわめいても会社が倒産した事実は変えられないから、やるべきことをやらなくては。
 私も失業の現実を胸に歩きだしたのに、なんと私は松浦につかまってしまった。
 足を止めてしまったのは自分のせいだけど、他の人に無視されからってよりにもよってフルネームを大声で連呼するなんてひどい。
 松浦は「同期のよしみで付き合ってくれるよな!」なんてご満悦だったけれど、会社そのものがこの世に存在しないのに、同期ってなんなのさ。

 それにしても……絶句するってこういうことだろう。
 本当の冒険だとは思わなかった。
 気を抜けば身体が震えてしまう。

 どうしてこんなことになったんだろう? って疑問が、グルグルと頭の中で踊って止まらない。
 ううん、どうして断らなかったんだろう? が正しいかも。
 富士山よりも高い空の上なんて、現実が家出したみたいだ。

 現状についていけずため息を吐き出した時。
 ご機嫌な松浦と目が合った。
 はしゃいだ調子のままで、松浦はキュッと親指を立ててきた。

「春奈ちゃん、俺、かっこいい?」
 え? と間抜けな声しか出せなかった。
 唐突すぎて、反応の仕方がわからない。
 私の戸惑いをよそに、松浦は意気揚々としていた。
 ワクワクが止まらないって感じだ。

「ほら吊り橋効果ってあるからさ、どう?」
 ドキドキするでしょって期待に満ちたまなざしに、思わず吹き出してしまった。
 本人はかっこいいつもりだろうけど、変なポーズまで決めてお笑い芸人みたいだ。
「残念でした。ほんと調子がいいんだから」
 チェッと松浦がカラリと青空みたいに笑うから、私もつられて笑い返してしまった。
「ドキドキはしないけど、面白くっていいと思うよ」
 そう言うと、なんだそれ、と松浦ははじけるように笑いだした。
 ひとしきり笑った後、窓の外に目を向ける。

「俺たち、ついてるぜ。最高のお天気だ」
 ついてるなんて思えない現状だけど、そうだね、と私も笑い返した。
 倒産案内を見た日と同じように松浦は笑ってる。
 飛行機に乗るまでは突然の失業に震えていたはずなのに、今はパラシュート一つで飛び出す不安でいっぱいで、だけど笑うことしかできなくて。

 私もあの日と同じように内心では戸惑っているのに、今は不思議な気分だった。
 自分の気持ちを置いてけぼりにしてるわけじゃなないけど、ほんの少しだけへこむのを保留にする感じ。
 不安とワクワクが、どちらにも偏らずねじれたマーブルになる。

 着々とスカイダイビングの準備は進んでいた。
「そろそろ飛びますよ」と見守っていたインストラクターにうながされた。
 ジャンプスーツは着ていたしゴーグルもつけていたけれど、これから空へと飛びだすなんて、やっぱり信じられない。
 スカイダイビングの体験コースは、身一つで参加できる。
 一緒に飛ぶインストラクターもジャンプスーツ類などの機材も、撮影のカメラマンも、すべて含まれているのだ。

 マスターたちは慣れた手つきで自分と初心者である私たちをハーネスでつないでいく。
 私も松浦も今日が人生初チャレンジだから、それぞれタンデムマスターがついていた。
 私のように全くの初心者でもタンデムマスターがパラシュートの操作をしてくれるので、身を任せるだけで空の冒険に飛び出せるなんて、松浦に誘われるまで知らなかった。
 背中に人のぬくもりを感じながら、開け放たれた扉の縁に立つ。

 初めてのタンデムフライト。
 先に松浦の組が飛び出した。
 私も一つ息を吸い込むと、マスターの合図に合わせて空に向かって身を躍らせる。
 そのとたん、圧倒的な落下風が押し寄せてきた。
 ともすればゴーグルごと吹き飛ばされそうになり、強風で息ができない。

 どこまでも落ちるだけのフリーフォール。
 私にあるのは、自分の身体だけだ。

 向かい風に歯を食いしばる。
 風を全身で受け止めながら、インストラクターの動きに添いつつ、姿勢を安定させた。
 バランスをとって見えてきた景色に、さらに息ができなくなる。

 青だった。
 ゴーグル越しでもまぶしいほどの青が、視界のすべてだった。
 右も左も上も下も、空の青! 青! 青!
 圧倒的な青が、私を包み込んでいる。

 ポン! と先に飛んだ松浦のパラシュートが開いた。
 続いて、私のパラシュートも開く。
 ポンっと開いた傘の丸さは、色鮮やかな赤だった。
 グンッと身体が急速に浮き上がる。

 色鮮やかな赤い傘は風に乗り、空をすべるように滑空しながら、空の青に溶けてしまいそうだ。
 風に乗る。
 落ちていくばかりなのに、向かい風が私を受け止めて、地上に運んでくれる。
 傍若無人な風があるから、パラシュートは心地よく空を飛べるのだ。

 松浦の「ブラボー!」の叫び声が途切れない。
 希望に満ちたその声に、いつの間にか私の目に涙がにじんできた。
 きっと今は笑うべき瞬間なのに、感動で涙がこぼれそうになる。
 空があまりに綺麗な青だから、泣きたくて仕方ない。

 松浦がタンデムフライトを選んだ意味が、今ならわかる気がした。
 怖さも不安も何もかも押し寄せてくる風みたいなもので、空に飛び出すのは怖いばかりだったけれど。
 透き通るような青に染まった空も、まぶしいほどの太陽も、色鮮やかなパラシュートの赤も、すべてがキラキラと輝いているもの。
 ほんの少しだけ勇気を出せば、未来も変わるって信じられる。

 だってほら、世界はこんなにも美しい。

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ヒンヤリ桃のコンポート 

腹ペコのその時に

夏です。人間には厳しい夏です。
しかし、果物の美味しい季節でもあります。
産直市場に行くと、甘い香りが漂うようになりました~♪
今年の夏は雨量が少なくてお天気がいいので、小ぶりでも糖度が高いそうです。
甘くてジューシーさを増した桃がとうとう出始めましたよ!

桃は歴史のある果物で、古くから愛されてきたようです。
古代中国では単なる果物ではなく病魔や災厄をよせつけない力があり長寿をもたらす不老長寿の実として珍重されていたみたいですね♪
西王母の誕生日に食べるならわしになっていたほど貴重な食べ物だったとか……ちなみに西王母の誕生日は三月三日。
日本の桃の節句と同じって、なんだか不思議な気がします。
現実の桃の節句は花盛りの時期で果実の旬ではないけれど、天空の桃園は桃の実がたわわになっているんだろうなぁなんて空想を広げてみたり♪
魔よけにもなって美味しいなんて、桃ってすごいかもしれない!

スーパーではいまだにお高い桃ですが、産直市場の規格外品はお手頃価格♪
そのまま食べるのもおいしいですが、桃は痛みやすい。
触れかたが雑だっただけで、すぐに茶色くなって傷ついてしまう。
と、いうことで。
一度に食べきれない時には、早めにコンポートにします。

桃を優しく洗い、ケバケバした産毛を洗い流して皮をむき、食べやすい大きさに切ります。
水、砂糖、レモン汁、桃の皮を入れ、沸騰させてシロップを作ります。
沸騰したら桃を入れ一〇分程度煮て、果実が透き通った感じになれば火を切って落としブタをしてそのまま冷まします。
冷蔵庫に入れて保存しても数日持ちますし、冷凍してシャリシャリ感を楽しむのもいいですね♪

あっという間にでき上がるし、桃本来のうまみも割り増しなので、桃をたくさん手に入れた時にコンポートはお勧めかも!
アイスクリームを添えたり、ミントを飾っても可愛いので、夏のデザートには最適です。
しばらくいろいろな品種の桃が出てくるので、桃バイキングも楽しみだ~♪

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ヒンヤリ水切りヨーグルト 

腹ペコのその時に

夏ですね。暑いです。
他に言う言葉を探すのは難しいぐらい、暑い日が続いています。
夏はこれからだというのに、すでにへばりんぼさんです。

熱中症対策に水分を多めにとっていると、それに比例して食欲が失せていく気がします。
固形物があまり欲しくない……色々とレシピ公開していると「嘘つけw」と突っ込んでもらえそうだけど、量は欲しくないのだ。
お腹はすくしグーグー鳴っても、ご飯の魅力値が低空飛行。
低血糖でひっくり返った事があるから、食べないという選択肢はないのだが、口にするものを選んでしまう。

朝は特に食欲が落ちるので、最近はまっているお助け食材といえば!
水切りヨーグルトなのだ~♪

ボールにざるをのせてペーパータオルを置き、プレーンヨーグルトを水切りするだけという簡単さもいい。
寝る前にセッティングしておけば、朝起きると濃厚な水切りヨーグルトが完成しています。
コツというほどではないけれど、ちゃんと成分表を見て寒天の入ってないものを使うと美味しいです。

そのまま食べるとレアチーズケーキっぽいし、トーストやベーグルに塗ってもいい。
個人的にブルーベリーのジャムとのコラボがお気に入りです。
サーモンと水切りヨーグルトのベーグルサンドもおいしかったですよ~ブランチにもぴったりですね。
クリームチーズに似た使い方ができるので、アレンジしていくのも楽しい♪

ザルで水切りしてでてきた水分はホエイと呼ぶのだけれど、牛乳で割ってドリンクにしたり、ホットケーキを作る時に入れたりしています。
ホエイはあまりおいしいとは思わないけど、身体によさそうとだしもったいないから捨ててません(笑)

一度に食べきれない時は、冷凍にしてフローズンヨーグルトにするのもいいですね!
バットに薄く広げて、ドライフルーツや蜂蜜・ナッツなどを散らして凍らせると、ヨーグルトバークというお洒落なアイス・デザートになるんですって。
これは未体験なので、気になってる。
どんな味なんだろう~フローズンヨーグルトはたまに作るんだけどね。
ヨーグルトバーク……名前だけでトキメキがアップする響き。
フルーツやシリアルはないけど、ジャムを乗っけて凍らせてみようかなぁ……美味しいのは間違いないと思うんだ♪

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もちっとぷにっと塩豆腐 

腹ペコのその時に

夏ですね。
とにかく暑いですね。
西日本は毎日のように気温が三十度を超えています。
気がつくと「暑い」と口にしているのですが、カレンダーを見ると夏がはじまったばかりで、気が遠くなりそうです。
ほどよい季節はどこに家出したんだろう……?

暑い日が続くと、台所に立つのがおっくうになります。
気分はバトルです。ただでさえ暑いのに、ガスを使うと脳内に「サラマンダーが現れた!」とテロップが入りそうです。

暑いさなかに、炎と戦いたくなーい!
と、いうことで炎を使わないヒンヤリご飯がふえています。

最近のお気に入りは塩豆腐~♪
作り方はとっても簡単!

豆腐全体に塩をまぶして、キッチンペーパーにくるっと包んで、豆腐の容器に戻すかタッパーに入れて、一晩おいておけば完成!
朝、塩をまぶしておけば、晩御飯にちょうど良くできあがっています。

食べやすい大きさにカットして、オリーブオイルとハーブソルトをかければおつまみにもなります。
チーズ感覚でトマトとを交互に並べたら、カプレーゼ風でお洒落度がアップ♪
シンプルだけどもっちりした感覚で夏に美味しい食材だと思います。
木綿豆腐と絹ごし豆腐のどちらでもできるので、食感の差を楽しむのもありです。

レシピ集には「まるでチーズ?!」と紹介されている塩豆腐。
おつまみとして有能で、ワインにも日本酒にも合いますね。
オリーブオイルに飽きたら、ごま油をチョコっとたらしてもいいし。
ワサビ醤油で食べてもおいしいかもしれません。

チーズと言われたらあっさりしたチーズと思えないでもないのだけど、大豆のふんわりした香りが特徴なので、やっぱり塩豆腐は豆腐って呼びたい……いや、和風チーズと呼んでも別にいいよ。
美味しければそれだけで満足だし。
冷奴に飽きてきた時に、ほんのり塩の利いたもっちりした塩豆腐は御馳走です♪
いつもと違う豆腐の食感を楽しむと気分が変わるし、大豆パワーを補給すると気力と元気が出るよね!
美味しい大豆製品で夏を乗りきるのだ~☆

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かば焼きジューシー 

腹ペコのその時に

 照りつける太陽。
 ジリジリと焦げるような日差し。
 すっかり夏である。
 当たり前と言えば当たり前だけれど、あまりに暑すぎるので脳みそまでとろけそうだ。
 気温三十度までは耐えられるけれど、それ以上は「神様、あんまりだ」とごねたくなる。
 だってさ……だって屋外はさ、アスファルトが日光でフライパン並みに熱せられているから、体温より気温が高いんだもーん!

 と、いうことで。
 すっかりエアコンの虜でいる今日この頃♪
 すごいね、文明!
 誰が発明したか知らないけれど、おかげで生きていける♪

 少し冷静さを取り戻すと、巷にはかば焼きがあふれていた。
 スーパーに行ってもコンビニに行っても、土用の丑の日にウナギを! と美味しそうな写真付きの注文用紙が貼られている。
 こんがり焼かれた肉厚のウナギに、たっぷりのタレかからみ、山椒の香りがふわんとしたら、夏のお疲れも逃げていくだろうか?

 でも、ウナギ。お財布には優しくない。
 むしろ厳しい。お財布に冷気を呼び込むような値段。
 一年に一度だから思いきろうか、それともぐっと我慢をして……なんてグダグダと悩んでいたけれど。

 電波の海を越えてやってきたのはタレ丼情報!
 ええやん、炊き立てご飯とタレのコラボ♪
 味の基本は同じだし、ウナギはなくてもタレがからんだご飯って美味しいよね♪
 これに刻みのりや小口切りのネギを乗っけて、ちょっと山椒でも振れば贅沢じゃね?
 思いたったらスーパーにゴー!

 かば焼きのタレって作れるけど買います。こんなに暑い気温の中で煮詰める作業なんかしたくないから、お財布に多少ダメージを与えても自分に優しく過ごします。
 僕の行きつけのスーパーには、かば焼きのタレが魚コーナーに置いてあります。
 今日のお勧めの魚の上に、タレはたいてい並べてあります。

 最近暑いのでお勧めコーナーには、ちゃんとウナギが鎮座していました。
 その隣にはイワシ。
 あ、これ、作戦だなって思いましたね。
 ウナギは高いけど、かば焼きは夏にピッタリよね~と思う奥様方のハートを、イワシならお財布に優しいわねって、持っていくなんてやっぱり商売上手だ。
 こういうときは、まんまとのせられるのが賢いのだと思う。(え?
 だって、目玉商品は値段がいつもよりやすいし。
 素直にかば焼きのタレとイワシをゲット♪

 イワシのかば焼きって、作るの簡単なんだよ!
 お魚は処理が大変~って敬遠されがちだけど、イワシは手だけで簡単に開けるからお勧めです。
 指を背骨に這わせながら、ミチミチッとはがしていく感覚ははまります。
 開いて骨を取った後で、小麦粉か片栗粉をまぶします。
(僕はタレを煮詰める際の時短を狙って片栗粉を使います)

 フライパンに入れて皮から焼き、焼き色がついたら裏返します。
 八割がた火が通ったら、タレを入れてに詰めながら加熱。
 あっという間にでき上がり~♪

 ご飯にのせてもいいし、レタスやトマトのサラダとお皿に盛り付けてもいいし、イワシのかば焼きもジューシー♪
 美味しく食べて疲れやバテを吹き飛ばし、夏を乗り切るのだー!

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コトコト・紅茶煮 

腹ペコのその時に

 すっかり夏ですね。
 毎日暑いですね。蒸し暑さが半端ないので、ぐったり時間が増えてます。
 台所での調理は炎との戦いに思えるぐらい、過酷な時間になってしまいますね。
 なんとかして、炎との対決を短くしたいものだ!
 と、思いながらも、たまに炎と戦ってもいいから食べたくなるものがあるんだな。

 その代表が紅茶煮。
 紅茶でお肉を煮るだけなので、あっさりさっぱりしているしとても食べやすい。
 豚さんの出番が多いけれど鶏肉もおいしいです。

 まず、肉に塩・胡椒で下味をつけ、お鍋にたっぷりのお湯を沸かします。
(ゆでるときに肉が隠れるぐらいの量を目安に)
 沸騰したら紅茶のティーパックを放り込んで、二~三分蒸らします。

 ティーパックを取り出し、肉を入れて塩で味を調え火にかけます。
 沸騰したら弱火にして、アクを取りながらじっくり煮ます。
 肉と一緒にしょうがスライスやローリエを入れるのもいいですね。
 煮る時間の大体の目安ですが、豚の塊肉だと四〇分ぐらい。鳥の胸肉だと十五分ぐらいかなぁ。
 芯まで火が通ったら火を止めて、煮汁の中で冷まします。
 僕はこの時ゆで卵を入れて、ついでに紅茶卵も作ります。
 そして、食べる前に薄くカットして盛りつけて完成♪

 砂糖・酢・みりんでソースを作る事もありますが、面倒くさい(あ!)ときはポン酢で食べます。

 弱火で煮込むので暑いですが、食べるときは冷めてるし紅茶の香りや風味がふわっとして、もてなし料理にも良いかもしれませんね♪
 そうそう、一度火を止めて紅茶を蒸らしたりしない人もいますよ。
 沸騰したお湯にお肉とティーパックをそのまま入れて、再沸騰したらとりだすだけ。
 ちょっとした手間なので、そこは人それぞれかなぁ。
 そして、紅茶で煮る事が多いけれど、ウーロン茶でも美味しいと思う。
(まだ未挑戦)

 さっぱりしているので、肉料理でも年齢は選ばないですね。
 ちなみに、僕のパパや甥っ子たちははこれを見た時。
 めちゃくちゃ喜んで「チャーシュー!」の叫びをあげたけど、食べて不思議―な表情になってました(笑)
 くっくっくw こってりじゃなくてごめんね♪

 レタスやトマトのサラダの上に乗っけて、ドレッシングで食べてもいいかもなーなんて思ってます。
 バランス良く食べながら、夏バテ知らずで夏を乗り切りたいな。

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ボタンのこと 

短編集 ふんわりと

「珍しいボタンが手に入ったんよ、帰ってきんしゃい」
 なまりのある祖母の電話に誘われて、休暇を取った私は新幹線に飛び乗った。

 何年振りだろう?
 父に勘当されて以来の帰省になる。
 行くのは祖母の家だから、実家を素通りにする後ろめたさはあるものの、ケンカ覚悟で乗り込む勇気もない。
 本当なら、こうして帰省することそのものが親不幸かもしれないけれど。
 ファッションデザイナーとして採用された私は次の企画の目玉をと尋ねられた時、幼いころからなじみのある木彫りを思い出した。
 私の故郷は木工の里として有名なのだ。
 冬物の提案に木彫りのボタンは魅力だ。
 職人の手彫り細工なら大きな売りになるだろう。

 だけど祖母の家にたどりつき引き戸を開けたとたん、自分の思い違いに気付いた。
 酒と味噌の美味しそうな匂いが鼻孔をくすぐってくる。
 ほのかにニンニクの匂いもするから、これは間違いなくボタン違いだ。

「遅かったんね」
 奥から出てきた祖母の手には白菜がある。
「ばあちゃん、ボタンってボタン鍋?」
 夏なのに、と思いながら確認すると、祖母は「他に何があるね?」と笑った。
「氷室開きやったんよ。はよ、手を洗いんしゃい」

 やられた。とはいえ、勘違いしていたからサヨナラって、すぐ帰るわけにはいかない。
 家の奥からは、ばあちゃん以外の声も響いてくるから、柄にもなく緊張しそうだった。
 家族に会うだけなのに、このいたたまれなさはどうしてだろう?

 ため息をつきながら覚悟を決めて中に入ると、母や弟たちがいた。顔を合わせるのも、私がデザイン学校に入学したくて家を飛び出して以来だから、本当に久しぶりだ。
 かける言葉に迷うし、何年ぶりだろう? なんて考える暇もなく、上座に座らされる。

 気まずい。
 私が入ったとたん、黙りこむのはやめてほしい。
 そして父の姿はない。
 ポツンとあいたガランドウみたいな空席が、啖呵を切って飛び出したことを思い出させた。
 当たり前なんだけど、実際目にすると当たり前にするには重くてしかたない。
 にぎやかなのは食卓の真ん中でグツグツと音をたてる土鍋だけだ。

「ちょうど食べ頃やねぇ」
 ソワソワと腰が浮いて逃げたくなったけれど、ちんまりと座った祖母が土鍋の蓋を取る。
「ほらほら、みんな食べんしゃい」
 銘々皿に取り分けて配る祖母があんまり普通だから、フッと肩から力が抜けていく。
「ほんま、ばあちゃんには敵わんなぁ」
 パクリと大きな口を開けて肉をほおばる。
 やわらかい。肉の甘みとともに、ニンニクの利いた味噌の風味が口の中に広がっていく。

「美味しい!」
 思わずこぼれた言葉に、漂っていた気まずい空気が溶けていく。
 うだるような暑さにたまっていた夏の疲れも一緒に薄らいだ。

 ほんまやと笑いあいながら、弟たちは自分の事を話しだした。
 高校生だったはずの弟たちが就職を決めたと報告するので、私だけタイムワープしてしまったみたいな不思議な気分だ。
 そうかそうかと話を聞いて、ほんで姉ちゃんは? と振られ、テヘヘと笑うしかない。

「今回はばあちゃんにしてやられたよ。冬物企画だからボタン鍋は景気付けにちょうどいいけどね」
 木彫りのボタンをポイントにしたコートやポンチョを提案しようと思っていた事を話すと、弟たちは顔を見合わせた。

「それなら、父ちゃんに頼めばいいのに」
 弟が「あの人、職人やん」と簡単に言うので、私は肩をすくめた。
「二度とうちの敷居をまたぐなって湯呑み投げた人やもん。洋装の話はするなって」
 柘植や桜で櫛を作る職人だから、和装にこだわるのもわかるんだけどね。それに地元の公務員として勤めてほしくて、それなりのレールを作っていたのもわかっているけど。
 洋服デザイナーとしての私は、父の思い描いた「理想の娘」ではない。娘とはいえ頼みごとをしないだけの分別は持ち合わせていた。

「父ちゃんとあんたのことはどーでもいいけど、ばあちゃんにしか連絡せんていかんよ」
 急に割り込んできた母が「さみしいわ」と言って、プッとむくれた。
 再び濁りかけた空気がそれで遠くに飛んでしまったけれど、子供みたいな拗ねかたをしている。
 親子の断絶がどうでもいいんか? とあきれたところで、ガラリと玄関の引き戸があく音がする。

 ドスドスと荒い足音が近づいてくる。
 もしかして、と思うよりも早く父が現れた。
 ドカリと空いていた席に座り、目も合わさない。
 だけど、ホレ! とばかりに勢いよく、小箱を私に差し出した。

 父はずっと無言だったけれど、その中身がなにか予感めいたものがあって、私は震える手で受け取った。
 そっと蓋を開けると、やわらかな彫りたての木の匂いがした。
 大小さまざまな花を模した手彫りのボタンが、箱の中であでやかに花開いていた。
 中でも特に見事なのが大きな牡丹の花。
 ああ、やっぱり。なんて流す事も出来ない美しい細工物。

 言葉もなく見入っていたら、横を向いたまま父が言った。
「変な気を回すんじゃねぇ。こんくらいいつでも作っちゃる。お前も職人の一人になるんやけ、半端な仕事をしたらわしが許さんぞ」
 そして思い切ったように顔を上げると、ヒタと私を見すえた。 

「いつでも帰ってこい。お前の部屋はそのままにしとる。待っとるけん」

 父は不器用に横を向いたけれど、私は胸が詰まってしまって言葉が出てこない。
 父の頭をなでながら「ええ子や」と見守っていた祖母が笑った。
 ヨシヨシとまるで幼い子供のような扱いだ。
「この歳になってまで、子供あつかいか」
「いくつになっても、お前の母ちゃんやけん」
 朗らかに笑う祖母につられたのか、ふてくされ気味だった父も声を出して笑いだす。
 つられたのか、ふふふと母が笑いはじめ、弟までコロコロと笑いだした。

 凍っていた家族の時間が、ゆるゆると溶けていく。
 心の氷室も開くように、熱い鍋をほおばった。

「ありがとう」の言葉しか浮かばなくて、私もいつのまにか笑っていた。
 酒と味噌で煮込んだやわらかなボタンが、私たち家族の新たなスタートボタンになる。

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キスまでのカウントダウン 

短編集 恋の卵

「誕生日プレゼント、何がいい?」
 ヒロ君の優しい声にうながされた時、思わず口から出そうになった言葉が唐突すぎて、自分自身が驚いてしまった。
 だって、キスしたい、なんて。
 下校時間の教室に同級生がいる中で言い出せるはずもなく、思考ごとフリーズし口ごもったままうつむいてしまう。
 どうしよう……声には出していないけど、無意識に浮かんだお願いが恥ずかしすぎる。

 キス、なんて。
 お付き合いをしているから別におかしくはないけど、まだ早い気がする。
 ヒロ君と私は付き合い始めたばかりで、告白してOKの返事をもらってから、まだ二週間しかたっていないのだ。
 それとも、もう二週間もたっているのに、手をつないだ事もないって、進展が遅すぎるのだろうか?

 なにより。
 私から「好き」って言ったけど、ヒロ君から「好き」って言われた事もない。
 ストレートに、私の事ってどう思ってる? なんて問いかけられるわけもなく、ずっと魚の小骨みたいに喉の奥で引っ掛かったままだ。
 自分一人で温めながらふくらんでいく好きと、ふたりでゆっくり育てていく好きって、同じ「好き」のはずなのに「好き」の向かう方向が違いすぎて困る。

 ちょっぴり不安だから、キスしたいとか。
 もっとヒロ君に近づきたいから、キスしたいとか。
 言葉よりも「好き」が伝わりそうだから、キスしたいとか。
 触れることでわかる事もありそうな気がするから、キスしたいとか。
 理由はいろいろあるけど、いきなり「キスしたい」なんて言えるはずもなくて。

 ずっと遠くから見つめていた人がすぐ側にいるなんて、それだけで嬉しいけどどうしていいかわからない。
 うまく話そうとか、ちゃんと笑わなきゃと思えば思うほど、手のひらにじっとり汗をかいて何も言えなくなってしまう。
 このままじゃ、つまらない子だって思われてしまうかもしれない。

 不自然にモジモジして挙動不審になっていたら、ヒロ君がスッと身をかがめてきた。
「どした?」
 顔をのぞかれて、ひゃぅ! と変な声が出てしまった。
 冷や汗が出てくるし、心臓が異様に早くなるし、目の前が真っ白になりそうで、どうしていいかわからない。
 絶対、変な子だとだと思われた。

「あの! また、明日までに考えとく!」
 じゃぁね、と走り去ろうとしたんだけど、足がもつれてからまってしまう。
 床に転がりそうになったところで、二の腕をつかまれた。
 ひょいっと軽々とヒロ君は私を引き寄せて立たせると、プッと遠慮なく吹き出す。
「ほんと、理沙ちゃんって面白いよな」
 あははって楽しそうな笑い声が、ザクザクと私の気持ちを突き刺していくのが悲しい。
 恋の相手から、いつの間にかお笑い担当になっているのかもしれない。
 思いきり肩を落としていたら、ひとしきり笑った後でヒロ君はポンポンと私の頭を軽く叩いた。

「慌てなくていいよ。そういうとこ、好きだから」

 思わず見上げたら、ヒロ君は真顔だった。
 今まで見た事もないような真面目な表情から目が離せない。
 私のこと好きって初めて言われた事に気がついて、自然に息が詰まる。
 反応の仕方がわからなくてドギマギしていたら、伸びてきたヒロ君の手が私の頬に触れた。
 壊れ物を触るような優しい動きに、ドクドクと激しく動きすぎて心臓が壊れそうになる。

「今度、恋人らしい事しようか?」
 恋人らしい事って? なんて聞き返す前に、ヒロ君の人差し指が私の唇に触れた。
 長い人差し指がゆっくりと唇の輪郭をなぞるから、背筋がゾクゾクして気が遠くなる。
 今日はお預けって少し残念そうにつぶやいて、名残惜しそうな動きでヒロ君の指が離れていく。

「だからね、リサちゃんが思ってるよりもずっと、俺は君の事が好きだから」

 当たり前のように言うと、フッと悪戯っぽくヒロ君は笑った。
 わざわざ私の目の前でチュッと音をたてながら、唇で自分の人差し指に触れた。

「間接キスだね」

 心臓が、止まるかと思った。
 そんなのひどい、と言っていいのか。
 そんなのずるい、と言っていいのか。
 恥ずかしすぎて、自分の気持ちがわからない。
 だけど、ハッキリしてる事もちゃんとあって。

「私も、ヒロ君の事、好きだから」

 一緒に帰ろうねと言って歩き出したヒロ君の服の裾を、キュッとつかんで引き止める。
 ちょっとビックリした顔をして、それから嬉しそうにヒロ君は笑った。
 目元や頬がほんのり赤くて、照れてるんだなってわかる。
 あのね、と続けようとして、ふと気がついた。
 チクチクと刺さるような視線を感じる。
 ソロリとその方向に視線をやると、教室に残っていた同級生たちがわざとらしく横を向いた。
 不自然な沈黙が痛い。

 いたたまれない気持ちで一人焦っていたら、帰ろ、と言ってヒロ君は私のカバンも持ってさっさと歩き出した。
 急いでその背中を追いかける。
 靴を履いて、玄関を抜けると、それまで急ぎ足だったテル君が振り向いて、ふわっと笑った。

「今度、ふたりきりの時に恋人らしい事しようね」
 その声があまりに優しくて、声が出なくなる。
 恋人らしいことって? って聞き返したいけどうまく言えなくてモジモジしていたら、ハハッとヒロ君は声を出して笑った。

「大丈夫、俺、我慢強いほうだから、ステップ踏むのも急がない」
 ゆっくりじっくり教えてあげるね、なんて艶のある表情のまま。
 思わせぶりに微笑んでくるから、私は赤くなることしかできない。
 どこまでも、ヒロ君にはかなわない気がする。

 たぶん、きっと。
 こうして交わす言葉のひ2とつひとつが、キスまでのカウントダウン。

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Author:猫乃あお
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