虹猫椿

まったり恋愛・日常・友情などをテーマにした、オリジナル小説や詩も掲載しています。お気軽にどうぞ♪

ありがとうございます! 

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メッセージ、ありがとうございますー!
朝方の地震ではそれなりに揺れましたが、西日本でも幸い被害のない地域でしたので、当たり前の日常を過ごせています。
御心配をいただきながら、ふっと関西に住まれている人を思い出し、電車の中だったのでは? などとおろおろしてみたり。
自分から引きこもったのに、気になる自分勝手さに頭を悩ませるのですが、うん。とにかくもう、知っている人も、知らない人も、無事ならいいです。
元気ならいろいろできることもあるのです。
みなさまも御無理なさいませんように!
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ありがとうございます♪ 

未分類

おひさしぶりです♪
あたたかなメッセージ、ありがとうございます(*^^*)
またいつかあいましょうって、希望があって、とても好きな言葉です。
自分がすごく恵まれた人間なのだな~と実感中です。
逢いたいーとか、つながりたいーとか、気持ちがわいてきちゃいます♪
ちょっとネットにつながれるようになっただけで調子に乗るな、ですよね;;

調子に乗って今すぐ何もなかったように(オイ)つながるのは簡単なのですが、まだ、語らずにはいられない好きなことやすごいことを見つけていません。
色々考えてはいるのですが、ちょっと休んで元気になったつもりでも、これだけは伝えたいんだって何かがないと、すぐに気持ちがポキンと折れてしまいそうなので焦らないことにしました。
気持ちが疲れやすいところは残っているので、たぶん、まだまだ心貯金が少ないんだと思います。

今は休むと決めた時のすごく疲れた自分を忘れずに、冬まですごいなにかを探そうと思います。
その何かが見つからなくても、それだけ色々チャレンジしていれば、心元気もたまるよね?
夏を過ぎて、冬が来るまで、楽しい事・面白い事をたくさん集めますね♪

本当にありがとう!
またいつか、お会いできる日を楽しみにしています♪

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メッセージ、ありがとうございます♡ 

未分類

お久しぶりです。
実を言いますと、webからいったん距離を取った日から、ネットにつながることそのものが今現在までなくて、こうして関わる事そのものが本当におひさしぶりです。
特に何かが起こっている訳でも、何か良くない事が現在進行形であるわけでもないのですが、ネットで他人に関わる事にとても疲れてしまいました。
著作権などを手放す気はないので、管理の仕方も考えなければいけないのですが疲れてしまって、こうしてアクセスするのも久しぶりです。

離れている間に温かなメッセージをいくつかいただいていて、メッセージが届いているとは思っていなかったので、すごく驚いています。
ありがたくって、嬉しい気持ちでいっぱいです。
今、とても疲れていて、なにもお約束できませんが、いつかまた誰かと関わりたくなる日が来ると良いなぁと思っています。
いつまでのお休みになるかわかりませんが、いつかまた、どこかでお会いできたらうれしい。
お心遣い、ありがとうございます。
皆様のご多幸をお祈りしています。

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失敗してた 

未分類

予約投稿の日付を間違えていた事に、今まで気づいてなかった……(っω・`。)
ひさびさに書いた小説なのに、なにをしているんだ、私は。
修正しました。

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未分類

とうとう花粉が今年もやってきた
春だ…ふきのとうが売られていたので、びっくりした。

綺麗なものを見たり、美しい言葉を聞いたりしたいなぁ。
そうではないものをたくさん見すぎてしまって、今、そういう見たくないモノから離れると色々シャットダウンすることになって、綺麗なモノや美しいものも目に入りにくくなってしまう。
どうでもいいものって、なぜか目につくよね。
染まってんのかな、i以前関わったえげつないものに…もう関係ないし、関わりたくもないから、食器の汚れみたいにゴシゴシ洗い流せればいいのに。心の洗剤が欲しい。
もっと綺麗なモノや美しいものを見たり聞いたりしたいなぁ。

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ひとまず 

未分類

今月中にお金返ってくる事になって、期日すぎに確認するまで信用できないなーと思いながら、まぁ大丈夫だろうと考えてみたり。
お金が関わる問題って、信用とか信頼とかそういう部分をガリガリ削るよな。
その当事者になってる相手だけじゃなくて、不特定多数に対しても、お金を介在させても大丈夫だよねってぐらい他人を信用する力がなくなるというか。
契約とかそういうのも、状況が大変な時なら期日すぎてもある程度は許容するし、急いでないものなら待つのも苦ではないけど。
ちゃんと文書で契約更新するとか、そういうのをしないと不信感を育てるだけになるね。
思い出すとイライラするけど、特定の小説サイトにあげた作品に対してイラスト依頼してるのに、期日ぶっちぎって契約更新もなぁなぁになのを棚上げして、特定のサイト利用を一時やめて別サイトを匿名で使えとか、気分転換しろとか、意味わからん。
気分は滅入りがちだけど、新しい創作の話をしたり日常の楽しい探ししてるのに、気にいらないからって他人の活動にケチつけて何が楽しいんだろ?
イラスト依頼の契約も入金もぜーんぶなかったことにして、永遠に描くつもりなくて、金払っただけで終わるのかーってその瞬間思って・・・そんなつもりなかったとか言う予想はついてるけど、ネット上でであった人って踏み倒したり踏み台にしたりする人間ばっかりだから、そういう人しか存在しないって幻滅思考に染まっちゃうよね。
契約文書にはしてないけど、小説サイトの公募に応募に合わせてイラスト描きますーって言ってたの、真に受けた私がアホみたいだ。文書にしてないから、知りませーんで終わりなんだろうな。
他人つてに「心配してたよー」って聞いたけど、心配ってなんだ?w
見たくない・聞きたくない・思いだしたくもない事に関連する話なんてどうでもいいのにえぐり倒して、イラスト使う予定のないサイトで活動しろとかけしかけておいて、心配w くだらない心配する間に、契約更新文書ぐらいよこせばよかっただろーに。
ほんと、なんか色々とつまんない人間関係で感性が穢れきっちゃったので、魂の禊をしたい>w)
まぁ、もうどうでもいいや。
返金あったら、くだらないネット関係はほぼ清算できるから、ボチボチペースで開運する予感。

(追記)
期日通りに返金あった。
払うときは今週末までとか言うのに、返すのは一ヵ月半か~と思ったけど、返す気はあったのね。
関わりたくないから、もうどうでもいいや。
とりあえず面倒なものは全部やめた。
ずいぶん錆びついて汚れちまったから、少しでも楽しく感じるものを探そうと思う。

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そして魔女は旅に出る 最終話 

Making Twilight

 チュンチュンと小鳥がさえずる平和な朝がきた。
 吹き飛んだ屋根は綺麗に焼失し、澄みきった青空が天井代わりに広がっている。
 空だけ見ればここちよい一日の始まりである。
 しかし、開催されているのは反省会だった。

 「で? この落とし前、どうつける気だい?」
 イライラと尖った幼い声はやけに圧力があり、寝起きで頭がボサボサの大人三人が沈痛な面持ちのまま肩を並べて、床にちんまりと座っていた。
 椅子に座ったままブカブカの袖をうるさそうにたくし上げ、十歳にも満たない少女は手にした杖で並んだ頭をゴンゴンゴンと順番に殴りつける。

「このクソガキどもが! あたしの老後を返しな!」
 そう、怒っているのは姿こそ幼く変化しているものの、偉大な魔女その人である。

 軍勢が去った後で瓦礫をできるだけ片よせ、かろうじて無事だった台所で、精いっぱい手をかけてもてなしの料理を作ったのは昨夜のことだ。
 田舎料理ではあったがありったけの食材を使って、思いつく限りの料理を食卓に並べた。
 弟子たちが持ち込んだ銘酒の数々も封を切り、ひさびさに酔いに身を任せた。
 加齢で鈍く痛みはじめていた膝も、自宅を失った不安も、気持ちよさに溶けていく。
 笑い声の絶えない良い宴会だった。

 やれやれ、家を壊しちまうなんて困ったもんだねぇ……と思いながらも、昨夜の魔女は幸せだった。
 家は失ってしまったけれど、どこにいても弟子と自分との関係は変わらない。
 おそらく、一生の宝物になる時間だと、心からそう思っていた。

 ほろ酔いで気分良く眠り、目が覚めたらコレである。
 驚くほど魔女は若返り、子供の姿になっていた。
 幸いなことに変化したのは身体だけで、記憶も精神も老齢の魔女だった。
 これで記憶まで飛んでいたら、想像だけで鳥肌の立つ恐ろしさだ。

 目覚めてすぐに異変に気付き、さすがの魔女も驚きの声を上げてしまった。
 その声で次々に目覚めたジークたちも魔女の姿を見て青くなったが、狂乱する一同の中でたった一人だけ「か、可愛いー!」と叫ぶ人物がいた。

 ルリと名乗った治癒師である。
 長身で均整のとれたマッチョで顔立ちも綺麗なのだが、言葉にしがたい派手さがあった。赤く爪を染めて濃いルージュを唇にさし、話し方も色っぽくシナをつくるので性別を越えた存在感を持っているのだ。
 男も女もどっちも好きだけど、あたしにはドレスが似合うと思うの。なんてどぎつい事を、今日の天気を語るように言い放つ。
 身につけているのも華やかな色彩の女物で、混戦の中では野太い声を上げて昆をふり回し、兵士たちをなぎ倒していた猛者と同一人物とはとても思えない。
 格闘もできる治癒師は需要が高いのに、ジークと出会うまで一人旅をしていたのは外見と性癖のせいだろう。

「ほら、まあ……子供になっちゃったものは仕方ないしさ。魔女様がいれば心強いじゃない? あたちたちと一緒に旅に出るとか、ダメ?」
 ダメ? とかそういう問題ではないぞと、一同から無言の圧力がふきだした。
 しかし、周りから向けられる白い目も気にせず、ルリは嬉しそうに両手を組んでくねくねと身体をよじらせている。
「美少女と一緒に旅なんて嬉しいー! あたしが衣装も選んであげるね♡」
 今にもスキップしそうな浮き立った様子に、こいつが元凶だと誰もが思った。

「おい、てめぇ……なにをした?」
 キリキリ吐きやがれ! とジークがつかみかかってその首を絞めると、ルリはあっさり白状した。
 グダグダに全員が酔っ払った頃を見計らい、遺跡で発見した若返りの小石を粉にして、魔女の飲んでいる酒にちょっとだけ混ぜたのだと言う。

「ほら、私ってまだ若いじゃない? うかつに飲んで生まれる前まで戻ったら消えちゃうもーん!! 魔女様ならちょうどいいところで止まると思ったのー! ごめんなさーい!!」
 とんだ言い訳である。
 魔女が杖でルリの頭を殴るよりも早く、ジークが飛びかかって取っ組み合いがはじまった。
「俺のババァを返せー!」

 響いたジークの叫びに、魔女はこめかみを指で押さえた。
 確かに身体はババァではなくなったが、この世から消えたわけではない。
 つかみあってジタバタともがき暴れる様を見守るだけでも疲れるのに、冗談みたいなやり取りが飛び交い耳まで疲れる。
「一体いつ、あたしがお前のものになったんだい?」
 ぼやいたけれど、聞く者はいなかった。

「ケンカ、ダメ」
 ドルムと名乗った斧使いの戦士が、ジークとルリの間に仲裁として割って入る。
 亜人の血を引いているらしく浅黒い肌はうろこ状で、背も低くがっしりした体格をしている。
 無口な性質というより舌の形が人間と少し違うようでうまく発音できず、話すのは苦手らしいが多彩な言語を理解してる理知的な男である。
 昨夜の見識深い語らいは魔女の心をずいぶん和ませてくれたし、良く見ればルリも耳の形や瞳の虹彩が人とは違い、装い方は上手だが半魔の血筋なのだろう。
 まっとうな普通の人と暮らしたことも少なそうだから、常識が違っても仕方ないかもしれない。
 ドラゴンの時といい、旅の仲間といい、ジークは人ならざる者と縁があるようだ。

 やれやれと魔女は肩をすくめた。
 良い弟子が、良い仲間を連れて帰ってきた。
 良い話で終わるはずだったのに。
 阿呆の弟子の仲間は、やっぱり阿呆だった。

 阿呆の弟子の師匠は、輪をかけて阿呆な存在かもしれないけれど。

 いつ終わるともしれない取っ組み合いを続ける三人をほっておいて、魔女は家の外に出た。
 半分崩れて形ばかりの扉を開け、見慣れた風景をそっと見降ろした。
 視線の高さはずいぶん低くなったけれど、小高い丘の上に立つ家からは草原の果てまでよく見える。

 魔女は自分の腕を軽くさすった。
 馴染みのない、小さな腕だった。 
 みょうちきりんな粉のせいで若返ったけれど、効力がいつまでもつのかもわからない。

 明日には老女に戻るのか?
 それとも、幼女から着実に年齢を重ね、再び老女になるまで生きることになるのか。
 わからないことだらけだ。
 もっとも、魔女はどちらでもよかった。

 青い空。緑の丘。
 赤い屋根は消えたけど、愛しい我が家。
 偉大な魔女と呼ばれた老女が、終焉の地に選んだ愛しい場所。
 サヨナラだ、とその景色に短く告げた。

 この世界には魔女の知らないモノであふれている。
 美しい、この世界を心に焼きつけられたら、それで良い。
 今の心はその姿と同じく、未知に惹かれる少女に戻っていた。

 見たい、聞きたい、知りたい。
 尽きることない未知の世界への渇望は、歳を経ても消えていない。

 偉大な魔女は冒険に明け暮れた。
 戦いも冒険も、弟子とその仲間に任せて、強欲な魔女と呼ばれるまで、世界を渡り歩くのも悪くないだろう。

 仲間はいる……可愛い弟子も。
 この足が動き続ける限り、彼らと一緒に歩いていこうと決めた。

 風が誘うように頬をなでて過ぎていく。
 貪欲な笑みを浮かべる魔女は、未知を訪ねる新たな旅に出るのだ。

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そして魔女は旅に出る 3 

Making Twilight

 赤い屋根に白い壁。
 小高い丘の上に建つ小さな家に、魔女は一人になった。
 なんてことはない。
 弟子の来る前の生活に戻っただけである。 
 しかし、すぐにもと通りという訳にはいかなかった。

 夜中にカタリと音がすれば、弟子が戻ってきたのかと目が覚める。
 食事を今までのように作ってしまい、誰がこんなに食べるのだとため息をつく。
 レースやリボンを取り出す元気もなければ、華やかな色のワンピースを着る気にもならない。
 白銀だった髪も初雪のように白くなり、食事の量もめっきり減ってもともと痩せていた身体が一回り小さくなった。
 弟子が人型に突き破った扉の穴は適当に板を張ってふさいではいたが、見た目の悪さよりも感慨深さが勝って直す気になれなかった。

 木苺を摘んでジャムを作っても、目を輝かせていた弟子はもういない。
 日溜まりで編み物をしようとしても気がのらず、弟子が調子に乗って拡張しすぎた畑を維持するために、動きやすい服を着てせっせと野菜を育て続けていたが、張り合いがないねぇ……なんて気が抜ける。
 農園はいつも豊作だったから良い値で野菜が売れているし懐はいつも潤っていたけれど、すでに老後も終盤である。使うあてのない貯蓄が増える一方でどこかむなしい。

 弟子が旅立って半年ほど経ったころだ。
 弟子からの便りが届いて、シャッキリと魔女の背筋が伸びた。
 小箱の中に入っていたのは初めて見る植物の種。
 手紙には「拾った」と短く書かれているだけだった。そっけないにもほどがある。
 怪しさ満点で毒々しい色の種は魔女の知識欲をくすぐるにはちょうどよく、弟子が元気にやっているのがわかって安心した。
 この種がどう育つのか、むくむくと気力がわいてくる。
 種が発芽するかわからなかったが、植えると同時に魔女の好奇心が芽を出した。
 色を失っていた魔女の日常は、鉢植えにした種を見るほどに明るい色彩が戻ってくる。

 弟子は旅に流れているので魔女からは便りを送ることはできなかったけれど、それからはワイバーンの配達人を楽しみにするようになった。
 弟子は意外にも筆マメだった。
 歴史深い国からであったり、独立したばかりの新興国からであったり、弟子はふと思い出したように便りの小箱を届けてくる。
 遠い町から届く手紙にはとてつもなく短い言葉がつづられており、同封されている珍品からは豊かな旅の匂いがした。
 変な彫り物だったり、小さな装飾品だったり、選ぶ基準が魔女とは違いすぎて、弟子の趣味は良くわからなかったけれど、立ち寄った土地の特徴は見て取れる。
 かつて旅したことのある土地の品は、特に魔女の心をくすぐった。
 知っている場所も、知らない場所も、想いを飛ばせば胸の奥が華やぐ。

 どれほど長く旅しても、自分が半人前だと思い知るばかりだと、彼はいつ気付くだろう?
 老境を迎えても自分がなお未熟であることを、弟子の便りで知るのも魔女の喜びだった。
 かつて旅に生きた魔女ですら、この世には知らないことが多いのだ。
 自分の若いころを思い出しながら、魔女は楽しい気分で弟子の歩む先を夢想した。

 旅は良い。
 楽しいことばかりではなかったけれど、足を前に運びさえすれば目新しい楽しさに出会えた。

 一年経ち。二年経ち。
 三年を過ぎる頃から、弟子の手紙が変化を見せる。
 費用は出すから海辺の町に遊びに来いとか、東の果てにある山のふもとに面白い祭りがあるから行ってみろとか、魔女に遠出の誘いをかけてくるのだ。
 半年に一度だった便りが、一カ月に一度になり、毎週になり、四年を過ぎるころには毎日と変わらぬ勢いになる。
 ホームシックなら顔を見せればいいだけなのに、遠くに行け行けと誘うばかりであるし、指定する場所も毎回違う。

 さすがに魔女も頭を悩ませた。
 これは他に理由があるのではないか?
 弟子とともに育てていた畑を放っておくのは気が進まないけれど、一度ぐらい誘いに乗ったほうが良いかもしれない。
 野菜を売るのも業者が日を決めて直接ワイバーンで引き取りに来るし、めったに出歩かない魔女は世界情勢にはうとくなっていたので、想像にも限界があって弟子の真意がわからない。

 まぁいい、とすぐに気持ちを切り替える。
 可愛い弟子の誘いにのればわかることだ。
 魔女もずいぶん歳を取ったから、これが最後の旅になるだろう。
 いそいそと荷物をまとめ、明日に備えて早めに目を閉じた。

 ぐっすりと眠っていたが、早朝、フッと目が覚めた。
 かつて冒険に興じていたころに培った勘が異変を告げる。
 いつもうるさいぐらい聞こえてくる小鳥たちの朝のさえずりが、今日に限ってないのだ。
 サッと手早く身支度を整え、家の外に出た魔女は「なんだい、こりゃ!」と声をあげた。
 魔女の畑の端にたどりつくまであと少しの距離まで、装備を整えた軍勢が迫っていた。
 どうやら魔女の家を包囲する腹積もりだったらしい。
 大切な畑を踏み荒らされる前に気付いて行幸だった。

 杖を取り出し地面を軽く叩くと、畑を護る呪をかける。
 足を踏み入れる者があれば、棘のある蔓草がわきだすだろう。
 ただ、護るだけでは意味がないので、速やかにお引き取りいただかねばならない。

 兵は千人近くいるだろうか?
 それなりに広い草原が、戦闘準備を終えた軍勢で埋まっている。
 小さな家を背にして、小高い丘に建つ魔女の姿を認めたのだろう。

「降伏せよ! 再三の願いを踏みにじり、我が国王の召喚に応じぬ罪人として、大人しく縛につかれよ!」
 司令官らしい男が声を張り上げてきたが、魔女は眉をひそめた。

 意味がわからない。
 魔女はそもそも国家に属さないし、絶対中立で不可侵の存在だ。
 要請を仕掛ける側が非常識なのである。

 ただ、風にハタハタと揺れる国旗に、ちょっとだけ見覚えがあった。
 数年前に建国した新興国のものだ。
 あれと同じ紋章付きの封書が何度か届いたけれど、見知らぬ者から分厚い手紙を受け取る義理はないので、遠慮なく受け取りを拒否していた。
 ワイバーンの配達人は「つっかえしたりなんかして、ほんとにいいんですかい?」なんて困った顔をしていたけれど、あんな重たく分厚い紙の束は読むだけでも時間泥棒だ。
 受け取るだけ受け取って燃やすよりわかりやすいお断りだったのだが、迷惑なアレが国王様からの要請だったのだろう。
 受け取り拒否ぐらいで武力行使を思い立つような国なのだから、この先も関わり合いになりたくない相手である。

「傲慢な王の代理に問う! 魔女の呪いを受ける気があっての愚行か?」
 軽く顎を上げ「速やかに去れ」と傲岸に告げながら、大地に魔力を流しこむ。
 畑の果てに並んだ蔓草が命を得たようにうごめき始めた。
 害獣よけに棘のある蔓草で畑を囲んでいるのだ。魔女の力を注ぎこむとウネウネとうごめきながら巨大化した棘のある触手が、からみあい壁のようにそそり立って軍勢を威嚇した。

 この小高い丘は、魔女にとって特別だった。
 背にしているのは、弟子と暮らした家だった。
 軍勢が踏み込もうとしているのは、弟子が耕した畑だった。
 目の前に広がる風景のあちらこちらに、弟子との思い出が染み付いている。
 この場所を守れるなら、命ぐらい差し出してもいい。
 魔女にとってはそれぐらい、壊したくない大切なものになっていたのだ。

 攻め入るなら容赦はしないと魔女は告げるが、司令官は火矢を放つように号令を出した。
 目の前にいるのは「偉大な魔女」と呼ばれる者を屈服させる意味は大きい。
 侵攻の理由なんて後からいくらでもつけたせるし、名高い者を討伐すればそれだけで国家の箔が付くだろう。
 老女の持っている名声も名誉も、すべてを王国のモノにできるのだ。
 敵対行為に対する討伐という名目こそ灰色な案件だが、しょせんは後ろ盾のない魔女だ。
 引退してからの年月も長いし、その腕も鈍っているに違いないと踏んでいた。
 それを証明するように壁を作り防ぐばかりで、率いる軍にいまだ被害は出ていない。

 戦う気満々の軍勢に、魔女は眉根を寄せた。
 大地からあふれる蔦は押し寄せてくる軍勢の足を止め、火矢を防いでいたがそれだけだった。
 棘は兵士たちの肌を割いても、致命傷を与えていない。
 まして、鎧や盾を身につけている者も多く、追い払うには至らない。
 繊維の高い相手に対し、軽い脅しは通用しなかった。。

 どうしてくれよう?
 逡巡しているうちに、蔦の壁の一部が燃え落ちるのが目の端に見えた。
 馬に乗った兵たちがそこからなだれ込もうとしている。

 チッと小さく舌打ちして、魔女が杖を空に掲げた時。
 キラリ、と空の端に白銀の光が目の端に見えた。
 瞬きひとつの短い間に近づいてきたソレは、キシャー!! と鋭い叫び声と同時に一筋の光を吐いた。

 ズドドドドーン!
 激しい衝撃とともに、軍勢の三分の一ほどが吹き飛ばされて消えた。
 パリパリと小さな電光が地面に散り、鎧越しでも兵の身体に突き刺すような痛みを与えた。

「なんだあれは?」
「こっちにくるぞ!」

 突然の出来事に騒然する兵士と魔女の間に舞い降りたのは、白銀の鱗を持つドラゴンだった。
 キシャー! と再び威嚇の叫びをあげ、雷光のブレスで軍勢の一部を吹き飛ばす。
 地面すれすれに滑空したドラゴンの背から、武装した三人組が颯爽と飛び降りた。

「助けに来たぜ、クソババァ!」
 ジークはスラリと剣を抜くと、兵士たちに向かって突っ込んでいく。
 旅立っていた魔女の弟子ジークが、仲間を連れて戻ってきたのだ。

 再三、ジークが魔女を他の土地に呼びだそうとしていたのも、新興国の灰色の噂を耳にしたからだ。
 名の売れた者を選んで召し抱えている命知らずの王様だと思ったけれど、その誘いを断った元勇者が襲われたと聞いていた。
 面倒事は嫌いだと元勇者は霞のように姿を消していたが、次は偉大な魔女に関心を持つのは目に見えていた。
 権威に興味関心のない魔女がうなずく訳がない。
 手に入らなければ、消せばいい。
 そんな短絡的な性格の王だと有名だったので、討伐隊を差し向けることまで想定して、ジークたちは近くの町までとって返して様子を見守っていた。

 ジークの勇者直伝の剣技は混戦の中でも冴えわたり、片っ端から兵士を斬り伏せていく。
 大斧を振り回す戦士と昆を持つ白い服を着た軽装の男も、ジークの後に続いていた。
 多勢に無勢のはずなのに、絶妙のコンビネーションを見せ、ジークを援護しながら司令官に向かって突き進んでいく。

 軍勢はといえば数こそ多いものの、突然の乱入者とドラゴンの登場に、すっかり浮足立っていた。
 後方の者たちは前進を試みていたが、前線の者は圧倒的な戦力差に抗体しようとする。
 火矢を放っても畑の中央に舞い降りたドラゴンの翼の一振りで方向を変え、自軍の上にふりそそいぐ。
 ほとんど燃え尽きようとしている矢でも、頭上から落ちてくる炎を前に平静を保つのは難しい。
 統率を失った軍は右往左往するばかりだ。

 魔女はといえば、わなわなと杖を持つ手を震わせていた。
 弟子の登場を喜び、感動にうちふるえていた訳ではない。
 斜め前方から放たれた電撃は、魔女の家も半分ほど吹き飛ばしていた。
 大切に守り育てていた野菜も、今、弟子自らが完膚無きまでに踏みつぶして粉砕している。
 思い出の品と一緒に、大切にしていた何もかもを、弟子自らが木端微塵に砕いていく。
 図体は大きく育ったのに、中身は子供の頃のままで、ほどほどをわかっていない。

「この、クソガキ……!」

 とんだ阿呆である。
 その阿呆を育てたのは、ほかならぬ魔女だけれど。

「おどき! あたしの力を見せてあげるよ!」
 魔女は壊れてしまったものを、後生大事に護る気はサラサラなかった。

 魔女の叫びが届くとあっさり戦闘を放棄し、即座にジークたちはドラゴンに向かって走る。
 なにが起こるかわからないが、魔女の怒声はただ事ではなかった。
 一緒に暮らしたことのあるジークとドラゴンは、魔女の怒りに付随するアレコレを知っているから撤収も早い。
 ジークたち三人が背に飛びつくと同時に、ドラゴンはさっと空に舞い上がる。

 魔女は大きく杖をふり、ありったけの魔力を大地に流し込む。
 ズゥンッと地の底から振動が響き、大地の表面がトプンと沼のように波打った。
 そのまま大きな音をたてて、杖のふれた先から大地が大きく裂けていく。
 鋭く浅い割れ目は鋭く大地を走り、高速で枝分かれしながら広がって穴となるので、人の足で逃げる速度よりはるかに速い。
 悲鳴を上げながら兵士たちは穴の底に次々と落ちていく。
 揺れてはまりこんだ不安定な足場から、なんとか立ち上がっても頭上からふりそそぐ土砂に押しつぶされ、穴に埋もれて動けなくなった。
 地割れの衝撃が収まるまでしばらく時間がかかり、気がつくとすべての兵士たちの首から下は大地にすっかり埋もれていた。
 見渡す限りの、頭、頭、頭。
 土に汚れて身動きとれなくなった顔は、恐怖と混乱に彩られている。

「野菜みてぇだな」
 掘り返されたばかりの真新しい土の上に並んだ無数の兵士たちの頭に、ジークが乾いた声でポツリともらした。
 もともと畑だった場所だからかもしれないが、助けてくれ~苦しい~と細いうめき声が言葉通り地の底から響いてくるし、奇形のマンドラゴラが大量発生した図にも見える。

 目をこすっても現実だとは思えない光景が広が中。
 魔女だけは当たり前の顔をしていた。
 久しぶりに全力で魔法を放つことができて、疲れるどころか艶々としてその表情は輝いていた。
 すいすいと軽やかに司令官のところまで歩み寄り、土の上にのぞいた頭を手にした杖でコンコンと軽く叩く。

「で、どうする? 頭の先まで土に埋もれて肥料になるのと、蔦でくびり殺されるのと、どっちがお好みだい?」
 ひぃぃぃ~と青ざめる男の横に、ジークも近寄ってひょいとしゃがむ。
「騎士様らしく剣の介錯がいいなら、切り離すのを俺が手伝ってやるぜ?」
 悪乗りした悪党の表情で、ほれほれとばかりに輝く剣の切っ先を見せつける。

「撤収―! 全軍撤収―!」
 狂ったように叫ぶ司令官に、魔女はつまらなそうに背を向けた。
 撤収しようにも、全軍、土の中に埋もれている。
 身動きとれない状態だから、自力で脱出できるものもいない。
 放っておくだけで勝手に息の根が止まって、腐敗し肥料になってくれるだろう。

 二度とあたしに関わるんじゃないよとだけ言い捨てて、魔女は蔦の魔法でポイポイと投げだす勢いで兵士たちの身体をひっこ抜いた。
 出荷前の根野菜のごとく積み重なっていく兵士たちはしばらく呆けていたが、正気に戻った者から脱兎のごとく逃げだしていく。

 速やかな戦闘放棄は賢明な判断である。
 この程度で終わらせるのは我ながら甘いとは思ったけれど、怨嗟に満ちた土地を作る気はないし、無益な殺生をすれば禍根を残すだろう。

 それに、と魔女は振り返る。
 愛しい弟子とその仲間たちが、魔女を見ていた。

 一目でわかる。
 冒険の旅を、人生を楽しんでいる者たちだと。

 魔女の放った魔法を見てもニコニコと笑っている。
 弟子はもともとそういう気質だし、その仲間が弟子に似ていても不思議はない。
 かつての魔女と同じか、それ以上の希望を胸に生きている若者たちに出会えるのは、年老いた魔女には喜びでしかなかった。

「よく来たね、このクソガキども。あったかい寝床は消えちまったけど、今夜は休んでおいき」
 半壊した自宅の前に立ち、軽く毒づきながら魔女は微笑んだ。

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そして魔女は旅に出る 2 

Making Twilight

 少年は魔女の弟子になった。
 最初の頃はおどおどビクビクとしていた。
 いつ捨てられるのか気にしているらしく魔女の顔色ばかりうかがっていたが、繰り返し「魔女に二言はないよ!」と威勢よく言い放たれ、その言葉が染み込むほどに弟子の顔をするようになった。

 魔女が品行方正でお行儀良い子を求めていないと気付くと安心したのだろう。
 表情が目に見えてよくなった。
 と、同時に生来のやんちゃが顔を出し、好奇心そのままに駆け回りだした。
 大人しかったのは最初のうちだけだったとも言える。

 普通の子供を育てるのも簡単ではないと聞くから、普通から少々離れた子供を育てるならどうなるか、魔女だってある程度の覚悟はしていた。
 覚悟していたものの想像していた「困ったこと」の生ぬるさは現実とのギャップがありすぎて、つくづく身に染みた。
 子供のやることは限度を知らないから、魔女の想定の百歩ぐらい先を行くのだ。

 こうしておくれと指示すれば「はい」と晴れやかな返事をするくせに、ほどほどという奴をちっとも理解していない。
 草抜きを命じれば、植えた苗までひっこ抜く。
 畑を増やすから家の前をちょっとだけ耕せといえば、目の前の草原が消えるほど掘り起こす。
 薬草を煮詰める鍋を焦げないように混ぜろを言えば、高速でかき混ぜて中身を撒き散らし、ほとんど空にする。

 教える場なら目が届くからその程度で済むし、なにかをやらかしてもやり直しがきくからまだいい。
 ちょっと遊んでくる~と出かけては、ポケットいっぱいにみょうちきりんな卵を詰め込んでくる。
 ベッドの中に持ち込んだ蛹が孵り、家の中に魔虫がウゴウゴとあふれ出たこともある。
 「ただいまー」と帰って来ても、両手が荷物でふさがっていたという理由で扉に体当たりし、人型の穴があいた。
 魔女の眉間に、日に日に深いしわが増えていった。
 そのぐらいなら「このクソガキー!」とプリプリ怒りながらもしつけの範囲で教える事ができたが、とんでもないことも平気でやらかした。

 魔女の子育て事情の困った選手権でトップに立つのはアレだ。
 ちゃんと面倒を見るからと言って拾ってきたペットが幼生のドラゴンだった。
 なんでも、手紙を魔女の元に運んできたワイバーンが飛び立つのを見て、本気の自分とどっちが早いか競争がてら追いかけてみたらしい。
 草原を過ぎ、森を過ぎ、そろそろ帰らなければ魔女に怒られるかもーと思った時には、深い穴に落っこちていたらしい。
 そこが卵の羽化間近のドラゴンの巣だったのが運のつき。
 弟子が体当たりをした卵が衝撃で割れ、幼生ドラゴンがパカーンと誕生してしまったのだ。
 まったくもってふざけるな、である。

 生来の頑丈ぶりを見せつけて弟子に怪我ひとつないのは幸いだったが、あわや親ドラゴンとの正面対決になるところだった。
 親ドラゴンを倒すのは魔女にとっては簡単だったが、弟子の不始末を無条件で尻ぬぐいするわけにはいかない。
 かといって卵から孵って赤ちゃんドラゴンが初めて見たのが少年だったので間違ったすりこみ生まれ、親ドラゴンの元に返すこともできない。
 それどころか、正式な手順を踏んでもいないはずなのに、弟子と幼生ドラゴンは契約関係になっていた。

 恐るべき潜在能力。
 才能がどこに向いているか不明な現状で、ドラゴンの中でも高位に位置する雷竜と契約するとは。
 ホイホイと気安く契約を結ぶなと叱れば、ドラゴンはこいつだけにするという阿呆である。
 説教を受けている場にいて、ドラゴン以外なら大丈夫だと判断する神経がわからない。
 他もダメに決まっている。
 同じぐらいの生命力を持つモノを友達と呼んで、際限なくはべらしたら獣魔軍団と変わらない危なさだ。
 契約がどういうものかコンコンと説明しながら、今を逃すと二度と修正聞かないしつけの分かれ道に立っていることに、魔女は震えた。

 とはいえ、やってしまった事は仕方ない。
 責任の取り方を教えるのも、師匠の役目だ。
 途方もない忍耐と努力を駆使し母ドラゴンと交渉して、弟子と幼竜との共生を認めてもらった。
 このドラゴン事件を思い出すと、私は世捨て人なのだと布団の中に引きこもって現世から消えたいと思うぐらい、実に実に実に大変な交渉だった。
 そう、倒すだけなら一瞬ですむのに、猜疑心と復讐心の強い竜族相手に、平和的解決を求めて認めさせたのだ。

 魔女のそんな苦労もわかってないので、少年は幼竜を膝に乗せて母ドラゴンと魔女を見比べながらニコニコしていたけれど、あんな大変な思いは二度とごめんである。
 親竜にお引き取り願った後で、さすが偉大な魔女様! とか、俺の師匠は最高だ! とか、嬉しそうにクルクル踊っている姿を見れたので悪い気はしなかったけれど、それと不祥事は別だ。
 問題行動に対して、あとできっちりとお仕置きはした。
 したけれど、ドラゴンの育て方を夜なべして調べたり、餌を探したり、責任を弟子に持たせたうえでつつがない育成に導くと言う難題が待っており、慣れない弟子育てにプラスしてドラゴンの子育てまでする羽目になったので、悩みすぎて頭が禿げそうだった。

 やんちゃな弟子を追いかけて走り回る日々。
 自宅のある悠々自適な生活のはずが、愛用の衣服は動きやすい旅装束だった。
 老後の楽しみにとイソイソ集めていたレースのリボンや色鮮やかなワンピースは、ひっそりとタンスの奥にしまわれたままだ。
 髪を結いあげる暇がないので、さっくり編んで後ろに流し手邪魔にならないようにした。
 簡単な体術なら教える事ができるので、冒険していた日々のように弟子と組み合った。
 本格的な武術となるとお手上げだから、時々は元勇者を呼びつけて戦い方を身につけさせた。
 弟子のくせに魔術の才能はゼロだったが、魔法について知ってさえいれば役立つことがあるので、惜しむことなく知識として与えた。
 その程度の事は当事者の少年にとって「とんでもないこと」ではなかったのかもしれないが、悩む時間の長さが魔女の額に深いしわを増やしていったが、その口元には苦笑ともつかない微笑みがあった。
 心ざわめく落ち着かない日々にいるはずなのに、独りでは味わえない奇妙な安らぎが胸にあふれていた。

 子育ては自分育て。
 かつての仲間だった聖女が口癖のように繰り返していた言葉を、ある日、フッと思い出した。
 弟子を育てているつもりだったが、確かに学んだことも多かったと思う。
 旅に流れていた遠い日々よりも、色濃く鮮やかな日常を手にしていた。

 そしてある日、魔女は気がついた。
 無我夢中で今日まで来たが、自分から少年に伝えられる事が、もう何もないのだ。
 弟子と暮らし始めて、十年の月日が流れていた。
 あっという間の十年だった。

 良い弟子だ。
 実に実に良い弟子だ。
 同じ言葉を百回繰り返しても足りないぐらい、良い弟子なのは、良い弟子であろうと彼自身が努力しているからだ。
 青年になってからも非常に口が悪いのは、魔女に似たからかもしれないが、欠点といえばそれぐらいだ。

 元気が良すぎる事はあったが、コツコツと積み重ねるように、よく学び、よく動き、よく働いている。
 とっくに魔女の背を越しているし、見目麗しいほどの筋骨たくましい青年に育っているのに、魔女の前では意識的に弟子の顔を作っていた。
 それは生い立ちから来る表情かもしれない。
 弟子が少年だった頃、不安にかられるたびに「ここにいていいの?」と問いかけてきたから、繰り返し「おまえは弟子さ、魔女に二言はないよ!」と宣言してきた。
 手を離すには早すぎたからだ。

 けれど、その問いかけを最後に聞いたのは、いつだっただろう?
 その言葉を忘れるほど、記憶に遠くなっている。
 今の弟子がこの家でこのまま暮らし続けて、なにか得るものがあるのだろうか?
 この家での生活に満足できるならそれで幸せなのだろうけれど、小さな幸せをかみしめて生きるには弟子は大きな力を持ちすぎている。

 何より、生来の好奇心が強いのだ。
 かつて、未来への希望を胸に抱いて、村を出た魔女と同じだ。
 すっかり大人になった成ドラゴンに乗って散歩に出かける事も増え、ふとした瞬間に遠くを見ている弟子の瞳にも、魔女は気付いていた。

 独り立ちする時が来たのだと思う。
 家や家庭に憧れを持っているからといって、魔女の家で弟子を続けることに執着する必要はないのだ。
 魔女はまた、覚悟をひとつ決めた。

 その日。
 ていねいに手間暇かけて、季節の野菜を大漁に調理した。
 我ながら笑いだしたくなるぐらい多彩な料理を食卓に並べた。
 用事を終えて返ってきた弟子が、目を丸くして「誰がこんなに食うんだよ?」と腹を抱えて笑うぐらい豪華な食事を用意した。

 すべて、弟子の好物だった。 
 血となり、肉となり、骨となる、魔女から贈る最後の晩餐。

「なんの祝いなの、師匠? なにかいいことがあった?」
 パクパクと美味しそうに料理を食べながら問いかけてくる弟子に、魔女はさみしく笑った。
 全くわかっていないところも、弟子の可愛いところだった。
「あったよ、とてもいいことさ」
 一つ、大きく息を吸って、ハッキリと告げる。
「もう、私が教えてやれることは何もないよ。一人前になるまで、よくがんばったね」

「……師匠?」
 どういう意味だと問いかけてくるから、あとは自分で学べってことさと目を見て言った。
 弟子からジワジワと表情が抜け落ちていく。
 なにやらいろいろと考えている様子に、祝いなのにしけたツラしてんじゃないよと魔女は笑った。

「俺、まだまだ半人前だろ?」
「さてね、それを自分で確かめてこいっつってんだよ」

 自信がないのは当たり前だ。
 未知の世界に足を踏み出す時は、いつだって不安が先に立つ。
 だけど、自分の足で歩き、自分の目で見て、自分で考えながら生きていく。
 それだけの力をすでに持っているのは間違いないから、自信を持って送り出せるのだと魔女は胸を張った。

「世界は広いよ。あたしが生きてるうちに土産話を持ち帰れなんて言わないから、せいぜい気張んな」
 弟子は「いきなり追い出すなんて、ひでぇじゃねぇか」とブツブツぼやいていたけれど、結局のところ旅立つことを受け入れた。
 迷うよりも、まだ見ぬ世界への興味が勝ったのだ。

「ジーク、おまえの未来に祝福を」

 送り出す朝、初めて魔女は弟子の名を呼んだ。
 魔力を持つ者が名を口にのせると呪文に似た意味合いを帯びるので、日常生活では呼ぶことを避けていたのだ。
 しゃんと背を伸ばし、いつもと同じ厳しいまなざしを、弟子の背中に向けていた。
 心配だとは言わなかった。
 気をつけて行けとも言わなかった。

 どんな難事が立ちふさがったとしても、越えていけるだけの技も知識も伝えたのだ。
 彼の未来の旅の行方は、彼の持つ運の巡り次第だろう。

 別れの挨拶に、ドラゴンの背に乗る弟子は不敵に笑った。
 食卓でいきなり別れを告げられた時にはさすがにへこんでいた様子を見せていたが、いつかこんな日が来るのはわかっていた顔だ。
 一緒に暮らし始めて間もないころに、いつかひとりで旅立ち世界を巡る日が来ると、賢明な魔女から予告していたからだ。

 それが今だとは思ってもみなかったけれど、永遠の別れではないのだ。
 だからサヨナラは言わない。
 いってきますとも言わない。
 師匠と弟子でいる日々に終わりをつげても、偉大な魔女に向ける想いは変わらない。
 せいいっぱいの愛情と尊敬を込めて、ジークは快活に告げる。

「俺がいなくなっても泣くんじゃねーぞ、くそババァ!」
 懐かしい悪態に、魔女はほんの少し表情をゆがめた。
 くそババァと呼ばれ続けたのは、出会って間もないころだ。
 本当にどうしようもない弟子だと思う。

「ハ! 泣くのはそっちだろ? とっとと行きな、このクソガキ!」
 威勢よく言い返すと、けらけらとジークは笑った。
 魔法の才能こそなかったが、明るくて、快活で、魔女にとっては最高の弟子だった。

 名残を惜しむような沈黙が、ほんの少しだけ落ちる。
 しかし、言葉を探す前に、バサリとドラゴンが翼を広げた。
 真っ青な空にむかって、白銀の鱗をきらめかせながら飛び立った。
 輝く希望とともに弟子をのせたドラゴンが、空の彼方へと遠ざかる。
 遠く、遠く、まだ見ぬ世界に向かって、力強く羽ばたいていく。

 見送る魔女は、静かに祈る。
 愛しい弟子の未来に、神の恩恵と祝福が満ちますように。

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そして魔女は旅に出る 1 

Making Twilight

 小さな国の小さな村。
 ありふれたその場所で少女は生まれた。
 大切に育ててもらったし周りの者は気にしていなかったけれど、自分が周囲となにか違っていると少女は気がついていた。
 違和感の正体がもって生まれた魔力だと気がつくのも早かった。目立つことに抵抗はないけれど、思うがままに魔力を振るう訳にはいかないと、なんとなくだが知っていた。
 それに、ありふれた日常に魔力なんて役立つ機会が少ない。
 強い力は使い方を謝ると凶器になる。
 とても愛されて育ったけれど、受ける愛情はそのままやわらかな枷になった。
 大切な人たちを傷つけないよう、なんとなくの我慢が重なるうちに、少女は見知らぬ外の世界に憧れをもつようになった。

 ある日、少女は一人で旅に出た。
 見るもの聞くもの、すべてが珍しい。
 少女の歩む道の先はいつも希望に満ちていた。
 冒険を仕事と呼ぶのは物騒かもしれないけれど、未知の世界に踏む込んでいく瞬間の胸の高鳴りが好きだった。

 旅は道連れ、世は情け。
 そんな言葉を知ったのは、冒険を始めて間もないころ。
 一人の旅も楽しいけれど、他人と仕事をするのも悪くない。
 むしろ仲間を得れば、ただの旅から大きな冒険へと変わっていく。
 たくさんの冒険を経て、気の合う連中がいつしか少女の仲間になった。
 道連れは増えたり減ったりしたけれど、友であり相棒であり仲間である存在ができるのは心強かった。
 問題があるとすれば、仲間になった連中が普通ではなかったことぐらいだろう。

 カラカラ笑う大男はずば抜けて強い剣士で、気がつくと勇者と呼ばれていた。
 光の加護と神の恩恵を受ける物静かな治療師は、行く先々で聖女とあがめられた。
 あふれるほどの大地の加護と魔力を持っていた少女も、大人になるころには偉大な魔女と呼ばれていた。
 ただの旅の仲間が勇者御一行の扱いなのだから、まったくもってクソ喰らえである。
 しかし、あまたの魔物をほふっているのは事実だし、他人からの勝手な評価は変えることはできないので苦笑するしかなかった。
 勇者さまとその仲間たちなんて大層なものになるつもりはなかったのに、大きな依頼をこなせばこなすほど名声を得てしまい、立ち寄る先でまるで神や聖者そのもののような歓待を受けるので、どんどんと心の座りは悪くなる。

 それでも旅は楽しかった。
 旅の途中で息絶えるのも悪くないと思っていた。
 不相応な扱いには辟易したものの、流れ続ける身には立ち寄った先の時間など、ほんのいっときのことだ。旅立血さえすれば「旅する魔女」に戻れる。

 だから、長い長い旅を終えたのは、老境に差し掛かってからだった。
 輝かしい勇者御一行も、やたら威風堂々とした老人御一行にしか見えなくなっていた。
 腕や力は衰えていないけれど、立ち寄る先で気づかいと心配を受けるようになってる。
 馴染んだ装具や武器を直せる職人も減っていた。
 ドラゴン退治に出かけアイスブレスを受けた際に、少々関節に痛みを感じたので肉体の変化に気付いた。
 きっちりドラゴンの息の根は止めたものの、そろそろ若者に役割を託す時期が来たと自らの老化を認め、仲間たちと別れることにした。

 笑って手をふり一人に戻った魔女は、小高い丘の上に小さな家を建てた。
 赤い屋根に白い壁。丸みをおびたフォルムの扉や小窓も、少女の夢がそのまま形を得たような愛らしい家だった。
 人里から遠く離れたその丘の周りにあるのは、そよそよと風が過ぎる穏やかな草原と、こんもりと茂る豊かな森だけだった。

 自分だけの静かな空間に、魔女は微笑みを浮かべた。
 これからは家を持つものしかできないことをして、のんびりと暮らすのだ。
 手の込んだ料理をするのもいい。
 揺り椅子で編み物をするのもいい。
 旅を知らない人々と同じ「普通の日常」を繰り返し、日溜まりで伸びをするような穏やかさは、冒険に明け暮れてきた魔女には新鮮だった。

 家の周りを耕して小さな畑を作ると、季節の野菜を育てた。
 森で集めた木苺を煮詰めて作ったジャムの甘さに感動した。
 苗から育て咲かせた薔薇を銀色の髪にさして、年甲斐もないと照れて笑ってみた。
 今まで着ていた旅装束とはまるで違う、すその長いワンピースを普段着にしてクルリと回った。
 冒険でのあふれる蓄えには手をつけず、薬草を集めて薬を作り街で売ったお金で家財道具を少しづつ増やしていった。

 ささやかなことを喜ぶ普通の暮らし。
 三年も経てば慣れてきて、退屈なあくびも増えてきたけれど、魔女は穏やかな心持ちで幸せをかみしめていた。

 ある日のことである。
 元勇者から、大きな箱が届けられた。
 遠い東の果ての国からやってきたワイバーンに乗る配達人が「お届け物です」と庭に置き、そのまま次の配達に飛び去った。
 あっという間に小さくなったワイバーンを見送って、やたら重たい箱に首をかしげる。
 じゃぁねと別れてから、一度も会っていないのだ。
 なんだいこりゃ? と思いながら箱を開けた魔女は、一瞬息をとめた。

 入っていたのは子供だった。
 図太い性格らしく、箱の底でグーグー寝ている。

 そんなことよりも。
 開けたとたんにゴンゴンと燃え盛る炎のように激しいオーラがあふれ出てきたので、その暑苦しすぎる存在感にのけぞり、思わずふたを締め直してしまった。
 魔力を持つ者だけに見えるオーラは、生物そのものの潜在能力に等しい。

 コレは、人が持つ力を遥かに超えている。
 配達便の箱も、よく見れば神殿の紋章入りの特別製だ。

 嫌な予感しかしない。
 しかし送り返そうにも、ワイバーンの配達人の姿はすでに消えている。
 気を取り直して元勇者からの封書を開いた。
 短く「俺には手に負えねぇから頼むわ」と書いてあった。

 は? である。
 人間の身体に、いにしえの幻獣に等しい力。
 幼子であることを踏まえると、理性も知性もこれから得るしかない未熟者で、ハッキリ言って制御のできない危険物だ。
 元勇者に手に負えないような危険物を、何故まわす?
 あの筋肉バカだが豪傑の勇者に無理なら、魔術しか取り柄のない魔女の手に負えるわけがない。
 手紙を握り締めたまま、わなわなと手を震わせる魔女の前で、パカーンと威勢良く箱のふたが開いた。

「お、ババァが偉大な魔女? ヨボヨボじゃねーか!」
 ひょっこり顔を出した少年は一つあくびをすると、のんきな声で挨拶とは言えない挨拶をし、ここどこー? なんて好奇心丸出しで周りを見回している。

 ピシリ、と魔女のこめかみに青筋が浮いた。
 ババァでヨボヨボだと……?
 確かに老女ではあるが、見知らぬ子供にいきなり暴言を吐かれて許せるほど、寛大ではない。
 おもむろに右手をあげ魔法の杖を取り出すと、遠慮なく少年に向かって振りおろした。

 パッコーン!
 良い音があたりに響いたけれど、魔女は目を丸くした。
 その辺の魔犬なら頭蓋ごと粉砕できる一撃を放ったのに、少年は「いて―じゃねーか!」といって怒るだけ。
 こいつは人族かもしれないが、存在そのものがヤバイ。
 思考に落ちた魔女に対して、少年は「ふざけんなよ」とかキャンキャンわめいていたけれど、それどころではなかった。
 オーラの具合からどついても大丈夫なぐらい頑丈だとは予想はしていたけれど、たんこぶぐらいはできると思ったのに。
 本気で殴り倒しても平気だろう。
 というか、本気で殴ったぐらいでは、倒せる気がしない。

 ハッキリ言おう。
 人の手だけで押さえこむのはムリだと魔女の勘が告げていた。
 勇者の体術か、魔術でつくりだしたゴーレム級の力技ならなんとか……?

 そこまで考えて、魔女は「ハ! 冗談じゃないよ」と肩をすくめた。
 魔法も魔術も万能ではないし、しつけや育成は魔力でどうにかできる問題でもない。
 老い先短い老後の楽しみに、子育てを付け加える気はさらさらなかった。
 元勇者が送りつけてきた理由はわかったけれど、そこまで苦労して少年を育てる理由も義理もないのだ。

「帰りな。あたしゃ子供が嫌いなんだ」
 冷たく言い放たれた途端、少年はそれまでの勢いをなくした。
 落ち着かない様子で押し黙り、自信のない表情で視線を忙しくさまよわせ、パクパクと口を動かしながらしばらく言葉をなにか探していたけれど、しょんぼりと箱の底に座り込んだ。
 シクシクと泣いたりしなかったけれど、ポツンと「俺だって、こんな箱が家なんて嫌だ」とつぶやき急速に空気がしぼむ。
「しかたねーだろ、どこに行きゃいいか、わかんねーんだもん。この中にはいってりゃ、きっと幸せになれるからってみんな言うけど、蓋をあけるたびに違う場所で違う人がいて、どうすりゃいいかもわかんねー」

 あんたもどうせ俺をどっかに放り投げるんだろ? と冷めた言葉を聞いて、なんとなく少年の生い立ちを魔女は理解した。
 育てるのにもてあました子供はたらいまわしにされるものだし、元聖女を頼っても神の恩恵を持たないものを手元に置く訳にはいかないだろうし、ガサツな元勇者に子供を育てるなんて気の利いたマネができるはずもない。
 そもそも、帰る場所のある子供が箱詰めされて、魔女の元に送りつけられる訳がないのだ。

 心の深いところが動いたのは、その瞬間だった。
 なにが決め手だったのか、魔女自身にもわからない。
 魔女はガリガリと頭をかき、面倒くさいったらありゃしないと思いながらも、覚悟を決めた。

 しょせん、行き場のないクソガキだ。
 子育てなんてしたこともないし、弟子なんて取ったこともない。
 手を離すにしても、次に送りつけるあてもない。
 いらないと見えない場所に捨てるのは簡単だけれど、それはそれで寝覚めが悪い。
 どうしても手に余ったら元勇者に叩き返せばいいけれど、初めての育成が規格外の危険物ってどういうことだ?
 さらば、ささやかで愛しさを積み重ねる穏やかな日々よ。

 キリリと表情を引き締め「お立ち!」と少年に言い放つ。
 のろのろと顔をあげたものの、すっかり意気消沈して涙にうるんだ瞳を少年が向けてくるので、魔女は「しけたツラだねぇ……」と好戦的に笑った。
 驚きに目を見開く少年の小さな肩を軽く杖で叩くと、涼やかな声で高らかに宣言する。

「あたしを師匠と呼ぶ勇気があるなら、独り立ちできるまで仕込んでやるさ。せいぜい励んどくれ」

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